ラカンというのはフランスのおっさんで、自称フロイトの一番弟子である。もう死んでしまった。死んでからも、いろんな人に悪口をいわれて、親切なジャック・デリダが、「あの人はかわいそうな人だったんだから、そんなこと言ったらだめですよ」とたしなめた。すごい天才だったという。天才というのはおおよそのところ、かわいそうな人生を送るものではないかとわたしはおもう。 たしかにラカンはすごい。まず本の値段がすごいとおもう。「セミネール」(十三巻)は、それぞれ五千円、「エクリ」(三巻)は一冊が七千円ていどする。まったくもってふざけた道楽である。買えませんよ、そんなに値の張る本を。しかも超難解ときているのだから始末がわるい。そんなお金を払って買った本の感想が、「なにが書いてあるのかわからなかった」では、あまりにもむくわれない。「昭和むくわれない音頭」をうたってさしあげようかしら。ラカンに。 それでも、ふだん、いろ