ブックマーク / honz.jp (18)

  • 『津久井やまゆり園「優生テロ事件」、その深層とその後』異常な犯罪者は異常な社会から生まれる - HONZ

    読むのにとても時間がかかったのは、著者が巨大な問いと格闘しているからかもしれない。戦後最悪ともされる凶悪事件を通して、私たちの社会の奥底で起きている変化をとらえた力作だ。 書は、神奈川県相模原市の障害者施設、津久井やまゆり園で、入所者と職員45名が殺傷された事件の深層に迫ったノンフィクションである。事件そのものを取材したは他にもあるが、書が類書と一線を画すのは、サブタイトルにある「戦争と福祉と優生思想」という視点だ。一見バラバラな3つの言葉は実は深いところでつながっている。それだけではない。著者の人生もまたこの事件と無関係ではなかった。 ノンフィクションのディープな読者は著者の名前に見覚えがあるかもしれない。著者には浅草で起きた短大生殺人事件に関する著作(『自閉症裁判 レッサーパンダ男の罪と罰』)がある。2001年、浅草で19歳の女性が見ず知らずの男に刺し殺されたこの事件は、男がレッ

    『津久井やまゆり園「優生テロ事件」、その深層とその後』異常な犯罪者は異常な社会から生まれる - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2023/04/29
    “植松は入所者を「何もできない」と見下していたが、「何もできない」のは実は植松自身のほうだったのである。”
  • なんたるガッツ!『明治を生きた男装の女医』がスゴすぎる - HONZ

    高橋瑞(たかはし みず)、嘉永5年(1852年)生まれ。その名を知っている人はどれくらいいるだろう。日で三番目に医師国家資格を取得した女性である。『明治を生きた男装の女医』は、その人生を丹念に綴った伝記小説だ。 24歳にして家出、旅芸人の賄い、女中、短く不幸な結婚の後、産婆に弟子入りする。28歳の時、跡継ぎになれと誘われるが、女医になりたいと固辞する。しかし、女性にはその資格がないことを知り、まず内務省へ直接請願に行く。すごい行動力だ。ちなみに、取り上げた赤ん坊は2万人という。 済世学舎への入学を希望するが、女子学生を受け入れたことがないために難色を示される。粘り勝ちするも、「女医は不可」、「乞」、「行かず後家」などと黒板に書かれるなど、下劣な嫌がらせをうけ続ける。 そんなことはものともせず、無事に修了し、順天堂医院で実習をすませ、34歳にして医師となる。荻野吟子、生沢久野に次ぐ、日

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  • 『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機 - HONZ

    ミチコ・カクタニをご存じだろうか。を愛する者にとって彼女はまさに「雲の上の人」だ。1955年生まれの日系米国人2世で、ニューヨーク・タイムズ紙で34年間にわたり書評を担当した。辛口の書評で知られ、98年にはピューリッツァー賞(批評部門)も受賞している。英語圏で最も影響力のある書評家だ。 書は、彼女が2017年に会社を退職して初めて世に問うた著作である。意外なことにそれは文芸批評ではなかった。トランプ政権の誕生以後、民主主義が危機に瀕する米国社会を鋭く分析した渾身の一冊だったのだ。 トランプ大統領の登場をきっかけに世界は明らかに変わった。フェイクニュースやプロパガンダがはびこり、真実を追究する姿勢はないがしろにされるようになった。ヘイトスピーチが主流化し、人々は異なる政治的立場を超えて対話する術を見失ってしまった。なぜこのような事態が引き起こされたのか。なぜ真実や理性は絶滅危惧種となって

    『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機 - HONZ
  • 何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』 - HONZ

    現代でもインチキ医療、危険な医療はいくらでも見つけることができるが、過去の医療の多くは現代の比ではなくに危険で、同時に無理解の上に成り立っていた! 書『世にも危険な医療の世界史』はそんな危険な医療史を、元素(水銀、ヒ素、金など)、植物と土(アヘン、タバコ、コカインなど)、器具(瀉血、ロボトミー、浣腸など)、動物(ヒル、人、セックスなど)、神秘的な力(電気、動物磁気、ローヤルタッチ)の五種に分類して、語り倒した一冊である。 実のところ、このは何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史を、簡潔にまとめたものだ。言うまでもなく、「最悪の治療法」は今後も生み出されるだろう。 単なる事例集にすぎないともいえるのだが、それでダレるということもなく、出てくる例があまりにもトンデモでひどいことをやっているのでなんじゃこりゃ! と笑って驚いているうちにあっという間に読み終わってしまう。たとえば、ペス

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  • 『ソッカの美術解剖学ノート』全クリエイターにおすすめ - HONZ

    韓国では著名なイラストレーターである著者が、31歳から40歳まで9年をかけて完成させたのが書『ソッカの美術解剖学ノート』である。 骨や筋肉や内臓など、人体構造について「なぜ今の形になったのか」に言及されているのがポイントであり、その知識をふまえイラストで絵の描き方を伝えている。書では人体の仕組みを知れるのと同時に、各部位がどう動きその形状になったのかが楽しく理解できる。 この楽しさというのが重要であり、「イラストの図解が付いた、とんでもなく面白い人体」と言ったほうがイメージとして伝わりやすいかもしれない。 一般的には、人体やイラストといえば「このように描きましょう」と、一方的に描き方を説明するものだ。一方で書は、目を描く際は「西洋人のまぶたは薄く、瞳孔がよく見える構造となっています。対照的に東洋人はまぶたが厚く、瞳孔がよく見えないため何を考えているのか難しくなり、神秘的なイメー

    『ソッカの美術解剖学ノート』全クリエイターにおすすめ - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2019/03/08
    とても充実した内容らしいので、買ったけどほとんど読んでない( ̄▽ ̄) いつか読もう。
  • 『さいはての中国』 あなたの知らない中国 - HONZ

    ノンフィクションを読む醍醐味である未知の世界を知る喜びをこれでもかと与えてくれる一冊だ。中国の地を這う現実を伝え続けるルポライターの著者が選んだ行き先は、途方もなく広い中国の“さいはて”。書に登場するのは、発展著しい深圳のネトゲ廃人、広州のアフリカ人街、内モンゴルのゴーストタウンや北米の「反日」華人組織などという、旅行者やビジネスマンはもちろん、大手メディアも近づかないような場所ばかり。大金を積まれても行きたくないような所へ軽快に潜り込み、現場の声を拾い上げ、世界の広大さを突きつけてくる。 最初の目的地は、中国最大のIT企業群が社を置くサイバーシティ深圳だ。次代のシリコンバレーとも呼ばれる彼の地の先進ぶりを伝えるニュースは引きも切らないが、この街には知られざる一面がある。そこには、中国各地からい扶持を求めてやってきた、著者が呼ぶところの「サイバー・ルンペンプロレタリアート」がいるのだ

    『さいはての中国』 あなたの知らない中国 - HONZ
  • 遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 - HONZ

    遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 双子研究を筆頭に、遺伝子が我々の身体的特徴だけではなくIQや統合失調症などの病気といった数々の要因に深く関連していることがわかってきている。が、そうであるならば遺伝子についての知見を深めることによって政策レベルで活かす──介入したほうがいい人間には介入し、そうでない人間には介入しない──というような形の、オーダーメイド政策はありえるのか。 たとえば、受け継がれた遺伝子的な差異こそが社会的不平等の第一の駆動力なのだろうか。現在の機会均等は主に”勉強ができること”によってもたらされているが、そもそもその能力に生来から違いがあるのだとしたらそれはどれ程の不平等につながっているのか。もしそれが明らかになれば、より適切な平等へ向けて歩み出すことができるかもしれない。これは見方によって

    遺伝子の差はどれだけの不平等を産んでいるのか『ゲノムで社会の謎を解く――教育・所得格差から人種問題、国家の盛衰まで』 - HONZ
  • 『遺伝子‐親密なる人類史』から考える人類の未来 - HONZ

    『遺伝子-親密なる人類史-』、タイトルのとおり遺伝子についてのである。遺伝子といえばもちろん生命科学の分野なのであるが、このの内容はそこに留まらない。遺伝子についての科学的な解説だけでなく、人間社会におけるその意義と重要性についても広く論じられている。このを読むと、二一世紀は、誰もが遺伝子について考えねばならない時代である、と強く印象づけられる。 著者のシッダールタ・ムカジーはインド出身で、スタンフォードからオックスフォードを経てハーバードからコロンビアと一流大学を渡り歩き、誰もがうらやむようなキャリアを積んできた腫瘍内科の専門医だ。研究者としても、造血幹細胞や白血病についての論文を、ネイチャー誌をはじめ一流雑誌に発表している。そのムカジーにとって、このは三冊目のである。処女作は『がん-4000年の歴史-』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫、『病の皇帝「がん」に挑む-人類4000年

    『遺伝子‐親密なる人類史』から考える人類の未来 - HONZ
  • 『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ

    書店内でいやでも目を引く、虫取り網をかまえこちらを凝視する全身緑色のバッタ男の表紙。キワモノ臭全開の書だが、この著者はれっきとした博士、それも、世界の第一線で活躍する「バッタ博士」である。書はバッタ博士こと前野ウルド浩太郎博士が人生を賭けてバッタのアフリカに乗り込み、そこで繰り広げた死闘を余すことなく綴った渾身の一冊だ。 「死闘」と書くと「また大袈裟な」と思われるかもしれない。だが著者が経験したのは、まぎれもない死闘だ。あやうく地雷の埋まった地帯に足を踏み入れそうになったり、夜中に砂漠の真ん中で迷子になったり、「刺されると死ぬことのある」サソリに実際に刺されたりと、デンジャーのオンパレードである。 なぜ、そこまでの危険を冒さねばならなかったのか。油田を掘り当てるためでも、埋蔵金を発掘するためでもない。そう。すべては「バッタのため」である。 昆虫学者に対する世間のイメージは「虫が好き

    『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ
  • 『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』文明再起動マニュアル - HONZ

    先週末30年ぶりにシリーズ続編として公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は突き抜けて凄まじい、破壊的なエンターテイメントだった。崩壊した地球文明の後に残った脳筋の男共が滅茶苦茶に改造されもはや原形が何だったのかさっぱりわからない車とバイクに跨り、何故か火を吹くギターを持って、裏切り者の女共を追いかけ上映時間の殆どをカーチェイスに費やす。走れども走れども砂漠以外何も見えない、荒廃した大地。資源は限られ少ない物資をヒャッハー!! と、暴力によって奪い合う、力こそ正義! な地獄絵図な世界が広がっている。 しかし、仮に核戦争なり宇宙人の侵略なり異常気象なり隕石の衝突なり、原因をどこに求めるにせよ、文明がいったん崩壊してしまったとしたら、当にそんな破滅的な状況になるのだろうか? 失われてしまった文明はもはや戻らないのか? 逆に復興できるとしたら、どうやって? 書は書名である『この世界

    『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』文明再起動マニュアル - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2015/06/25
    記録媒体は口伝か?石に文字を彫り込むのか?
  • 『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』諸行無常の響きあり - HONZ

    今、日全国には77,000にも及ぶ寺院が存在するという。コンビニの数が52,380店というから、その多さに驚かれる方も多いだろう。だがもっと驚くのは77,000のうち、住職がいない無従寺院の数が20,000を上回るという現実である。 昨年「地方消滅」という言葉が、世間を賑わせた。2040年までに人口が急減し、896もの自治体に消滅の可能性があると報じられている。この地方の人口問題はまだ警鐘が鳴らされている段階にすぎないのだが、寺院の問題は既に消滅期へと突入しているのである。 書は、そんな寺院の未来、現在、そしてターニングポイントとなった過去までを連ねた一冊である。著者は、僧侶の資格を保持する経済記者。消えゆくものを見える化するために全国津々浦々を回り、情報を足で稼ぐ必要があった。北海道、鹿児島から、離島や被災地まで。その取材量が、まさに圧巻である。 限界集落とも呼ばれる過疎の村。その多

    『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』諸行無常の響きあり - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2015/06/01
    尼僧がいなくなるのは、どうやら男女差別者が改善されないからなのですね。
  • ここまで書いてええんかい 『工学部ヒラノ教授の事件ファイル』 - HONZ

    「ヒラノ教授、あんたの時代はよかった」。工学部ヒラノ教授シリーズを読んだ現役教授たちは、私とおなじようにつぶやくだろう。ご人は、どこがよかったのか、とおっしゃるかもしれない。しかし、20年ほど前、いろいろと不自由や不条理はあったけれど、国立大学はゆるくてのどかな場所だった。 このでは、その時代にヒラノ教授が(たぶんやむなく)手を染められた不正行為が大胆に開陳されている。しかし、窃盗罪や詐欺罪でも時効は7年。東京工業大学を停年で辞されてから10年以上になるヒラノ教授、いまさら咎められることもありますまい。それに、20年ほど前は、やったらダメとわかっていても、いかんともしがたい事情が多々あった。 某省の研究費など、どういう理由かは知らないが、毎年2月にならないと振り込まれなかった。単年度決済なのだから、3月の中旬までに使い切る必要があるにもかかわらず、である。もちろん計画は一年かけて遂行す

    ここまで書いてええんかい 『工学部ヒラノ教授の事件ファイル』 - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2014/12/22
    いやーしんどいなあ
  • チャラめの美術好き・文学好きに読ませて反応をテストしてみましょう!バロウズ×ウォーホルの対談集 - HONZ

    20世紀の文学に強烈なインパクトを残し、『クラッシュ』で知られるJGバラードらのNWSF世代や、ロックシーンではニルヴァーナのカート・コバーンからも、深くリスペクトされているウィリアム・バロウズ。 現代美術に複製性の問題をセンセーショナルに持ち込み、アイドル的な芸術家というモデルをこれ以上ないくらい鮮烈に演じきったアンディ・ウォーホル。 今回とりあげる対談集『テープ』は、20世紀に生まれ20世紀に死んだ、この2人のアメリカ人が、それぞれの晩年に過ごした日々を捉えた対談集です。バロウズとウォーホルはだいたい10歳ほど歳が離れていますが、ともに1950年代から1960年代に花開いたビートニクとポップアートという文学・芸術の流行の中心にいた人物です。 今回の『テープ』は、このバロウズとウォーホルという2人が、それぞれの名声が確立された1980年代に、ニューヨークで知り合い、ルー・リードやミック・

    チャラめの美術好き・文学好きに読ませて反応をテストしてみましょう!バロウズ×ウォーホルの対談集 - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2014/09/10
    80年代だからもうピーク過ぎてんな2人とも。
  • 無能な研究者のずさんな仕事……なのか?  除草剤アトラジン問題のゆくえ - HONZ

    除草剤アトラジンをめぐる長年の論争がひとつの山場を迎えているようで、『ニューヨーカー』の2月10日号にホットなレポートが載っていました。アトラジンは日でも使われている除草剤でもあり、今後の成り行きが注目されます。 が、今回の記事はアトラジンの性質というよりもむしろ、医薬品や農薬などの安全性を調べている科学者が、その製品を製造販売している企業にとって好ましくないデータを出してしまったらどうなるのか--しかもそこに巨額の金が絡んでいるときには--という、われわれとして知っておくべき残念な事実に関するものでした。 除草剤アトラジンの問題は、両生類(とくにカエル)の内分泌学を専門とする、タイロン・ヘイズという研究者を抜きにしては語れないようで、『ニューヨーカー』の記事もヘイズを軸として展開されていました。 ヘイズは、サウスカロライナ州出身のアフリカアメリカ人で、彼が生まれ育った地域では、人口の

    無能な研究者のずさんな仕事……なのか?  除草剤アトラジン問題のゆくえ - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2014/03/10
    うああ。きつい話だ。数年後に映画になりそう。
  • 「しかない」ではなく「したほうが良い」 『脳を鍛えるには運動しかない!』 ジョン・J・レイティ - HONZ

    採点:★★★☆☆ 最近めっきり運動しなくなった人におススメ。加速する肥満(書評はこちら)と併せて読むと尚よし 運動といえるのはせいぜい通勤中に駅まで歩くだけ。という人も多いのではないか。 狩猟採集から農耕へと我々の料獲得方法は大きく変わったが、ここまで身体を動かさなくても生きていけるようになったのは、日では、ここ30年程度に過ぎないだろう。つまり、我々がこの環境に向き合う第一世代であり、我々の遺伝子はこの環境へは最適化されていないのだ。書は如何に運動が人間の機能について重要かを様々なデータで明らかにしていく。 そもそも何故運動しなければならないのか? それは、我々の祖先は常に運動しなければならなかったからだ。狩猟採集の時代には、筋力に優れた人間の方がより多くの遺伝子を残すことが可能であったことは想像に難くない。 では、何故運動が脳を鍛えることになるのか? 結論はシンプル。運動によって

    「しかない」ではなく「したほうが良い」 『脳を鍛えるには運動しかない!』 ジョン・J・レイティ - HONZ
  • 【連載】『家めしこそ、最高のごちそうである。』 第3回:1970年代の外食は、化学物質とまがい物の時代だった! - HONZ

    稀代のジャーナリストが語る、家庭料理の極意。「家めし」の美味しさを追求していったら、答えはシンプルなものへと辿り着いた。第3回は、1970年代の外を振り返ります。 1970年代は私はまだ10代で田舎に住んでいたので、東京の大人が行くようなハイブローな店はまったく知りません。たまの週末、家族での外というと、いまでいうカフェレストランのような喫茶店風洋屋が多かったように覚えています。単なる豚肉のショウガ焼きが「ポークジンジャー」なんていうハイカラな名前で供されていて、ナイフとフォークで見よう見まねで肉を切り、フォークの背にご飯をのっけて口に運んだりしていました。ショウガ焼きというと古くさいので、それをカタカナで言い換えてお洒落なべ物のふりをさせていただけなんですね。そういうチープで涙ぐましい時代だったのです。 ピッツァなんて洒落たことばは存在せず、宅配ピザもありませんでした。日で最初

    【連載】『家めしこそ、最高のごちそうである。』 第3回:1970年代の外食は、化学物質とまがい物の時代だった! - HONZ
  • 『WILDER MANN』ヨーロッパの獣人たち - HONZ

    ヨーロッパ19カ国で現在も行われている冬から春にかけての祭りに登場する「ワイルドマン」たちを撮影した写真集である。それにしてもじつに不思議だ。「なまはげ」も含め、なぜ北国の冬はこのような存在を必要とするのだろうか。 160点の写真に収められている衣装をそれぞれじつに個性的だが、全体を見渡すとどこか同じ匂いがする。毛皮、つの、仮面、ベル、麦わら、袋。使われている材料は類似性があるのだが、完成した姿はそれぞれに違う。それでいて、北国の冬であることは背景を見なくても判るのだからやはり不思議だ。 2000年前、カエサルに率いられたローマ軍団はガリアで彼らを見たのだろうか。ヨーロッパの子供たちは彼らを恐れるのだろうか。黒く塗られた顔、骸骨の仮面、竹馬、芋のビーズ、頭が木の箱の牛。もし、暖炉があるのなら、サイドテーブルに備え付けておきたい素晴らしい一冊だ。

    『WILDER MANN』ヨーロッパの獣人たち - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2014/01/23
    ヨーロッパにもこういうのが残ってたんだな
  • 『ストラディヴァリウス』 - HONZ

    17世紀から18世紀にかけてイタリアのクレモナでアントニオ・ストラティヴァリウスによって作られた5挺のヴァイオリンと1挺のヴィオラの物語だ。600挺ほど現存している「ストラティヴァリウス」は現在でも最高の価格が付くヴァイオリンである。1994年に日音楽財団が購入した「パガニーニ・カルテット」といわれる2挺のヴァイオリンと1挺のビオラ、1挺のチェロのセットの価格は1500万ドルだった。書の主役の1挺である「ケーフェンヒューラー」という1挺には805万ボンドの値がついていた。円高のいまでも11億円を超える。 このの著者は1965年生まれのイギリス人だ。書が最初の著作だという。しかし前半のストラティヴァリ人の伝記はこのに尽きるといっても良いほどの出来だ。イギリス人特有の歴史と工芸品への顕微鏡的なこだわりがある。物事を総覧的に記述するという能があるといっても良い。羨ましい限りだ。日

    『ストラディヴァリウス』 - HONZ
    Mozhaiskij
    Mozhaiskij 2013/10/07
    山形浩生言うところのどうでも良いサービスなのでは
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