◇2人に言って欲しかった 9月下旬のある夜、「話があります」と小池正晃が声をかけ、多村仁志、後藤武敏の3人が横浜市内で食事をしていた。 小池と後藤は横浜高校時代のチームメート。多村はその4つ上の先輩。今年、多村が横浜に復帰してからは、3人はいつも行動を共にしていた。集まれば高校時代のように他愛のない話。しかし、この日は違った。呼び出された2人とも、話の内容は分かっていた。重苦しい空気が3人の間に漂っていた。 「引退を考えています。守備、走塁はまだ成長できると思っている。でも、打撃に関しては自信が持てなくなった。そして、ここから大きく成長できるとは思わない。気遣いは抜きにして、俺のバッティングをどう思いますか? 『指導者に』と声をかけてくれている球団の誘いを断ってでも、まだ選手として勝負できるだろうか?」 長い沈黙があった。後藤は目を真っ赤にしていた。「小池は、中学の頃から神奈川では