著者は、現役のときは大蔵省きっての論客(というか外部でものをいう珍しい官僚)として知られ、膨大な著書がある(今年だけで6冊!)。どれも似たような内容なので、それを新書版でコンパクトにまとめた本書がお買い得だろう。 90年代前半まで著者は「日本型資本主義」を賞賛し、西部邁氏などと一緒になってすべての改革を否定する「真の保守主義」を標榜していた。しかし国際金融局長として為替手数料の自由化によって「日本版ビッグバン」の引き金を引いた後は「改革派」に転向し、「グローバル化に乗り遅れるな」と説くようになった。本書もその延長上で、「よいデフレ」とか「マクロ経済学は役に立たない」などの持論を展開している。 学問的には、「よいデフレ」論には異論も多い。本書の統計にも示されているように、輸入のGDP比が10%程度で、中国からの輸入はその20%だからGDPの2%である。それが「構造的デフレ」をまねいたとい