ロシアといえば今でもどこか謎めいた文化圏であるように感じる。その前身、ソビエト連邦にて今から遡ること約100年、今では様々な音楽や効果音に欠かせないシンセサイザーが1920年代に既に存在していたとはまこと驚きである。旧ソ連の電子楽器といえばテルミンが有名だが、同時期に、実に前衛的な手法を用いたシンセサイザーが三人の男たちによって作られた。しかもそれが紙を使ったお手製のシンセサイザーなのだ。 音と映像をシンクロさせる技術はトーキー映画黎明期にして、1930年代には旧ソ連の映画作品の中で効果的に使用されることになる。世界初の長編トーキー映画がワーナー・ブラザーズ製作のアメリカ映画『ジャズ・シンガー』(1927年)であることを考えても、当時のロシアがいかに進んでいたかわかるだろう。 ■旧ソ初のトーキーに影響を受けて 電子楽器幕開けの兆しが見え出した1920年代、かのドイツの総合芸術学校バウハウス