日経ビジネスは8月28日号に「ここまで朽ちた 独り負けニッポン漁業」と題した特集を掲載した。EEZ(排他的経済水域)と領海で世界6位の面積という豊かな海洋資源、食の安全・安心というブランド、世界有数の漁業大国としての歴史、そして世界的に膨らむ魚食ニーズ――。これだけ経営環境が揃っているのに、日本の漁業は衰退してきた。しかも、世界的には漁業は成長産業の1つで、日本だけが独り負けの状況だ。その問題の詳細な分析は特集記事をお読みいただきたいが、その一端として、多くの漁師に聞き取りをしていく中で記者が感じた違和感を本稿では紹介したい。 7月末、サンマ漁の本格化を前に、記者は水揚げ地の釧路港(北海道釧路市)を訪れた。港には20トン級の中型船が8月10日の解禁日を前に居並んでいた。集魚灯で秋刀魚を集める「棒受け網漁」向けの船で、サンマ漁の主力となる。 しかし、先立って7月8日に漁期が始まっているはずの