村上春樹氏の新作が7日で100万部に到達した。これはもはや社会現象である。しかし読んで感想をいうのは当たり前。読まずにこのビッグウェーブにちゃっかり便乗するのが大人のたしなみである。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏がその極意を伝える。 * * * 近ごろは辛気臭い話ばかり聞こえてくる出版界が、ひさびさの明るい話題で盛り上がっています。4月12日に発売された村上春樹の3年ぶりの長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)は、わずか7日で100万部を達成。その勢いは増すばかりで、さらに大きな社会現象になっていくでしょう。 もちろん、じっくり読んで、たっぷりハルキワールドに浸るのが、王道の楽しみ方です。しかし、読まないと楽しめないかというと、そんなことはありません。村上春樹という偉大な作家は、大人にとって活用しがいがある存在になってくれています。 今回の作品も、まずはタイトル