経済の実体を直視せず、現実離れした前提を置いて厚生労働省が試算した年金財政の見通しに、どれほどの意味があるのか。政府は足元の厳しい経済状況を踏まえたうえで長期展望を見据え、年金の財政検証をやり直すべきだ。政府・与党の政策目標である経済の前提条件をそのまま使って試算を行い「これで年金は100年安心」と言われても、果たして国民は信用するだろうか。 厚労省が公表した公的年金の将来見通しは、物価、賃金の上昇率と積立金運用利回りについて、前提条件が楽観的過ぎる。いくら長期間の見通しと言われても、国民の実感と大きくズレている。 試算は9通りの前提条件で行っているが、中位の基本ケースは、物価が1%、名目賃金が2・5%上昇、年金積立金の運用利回りが4・1%となっている。最悪のケースでも物価は1%、賃金は2・1%、利回りが3・9%だ。現在の状況などを見る限り、最悪のケースでさえ達成は相当に難しい。基本ケース