政府が新型コロナウイルス対策として打ち出している「飲食店への酒類提供停止要請」を巡り、二つの方針が相次いで撤回に追い込まれた。要請に従わない飲食店に対し「金融機関から働きかける」「酒類販売業者に店との取引停止を求める」の二つである。 「法的根拠のない『脅し』」との批判が噴出しているが、正直「いまさら」感がぬぐえない。菅政権といい安倍政権といい、コロナ対策に絡んで「法的根拠のない私権制限」をどれだけやってきたことか。両政権にとって、実はこれが「通常運転」だとしか思えない。この1年半の両政権の「雑な私権制限」ぶりを、改めて振り返ってみたい。(ジャーナリスト=尾中香尚里) 「法的根拠を伴わない私権制限」で最初に想起されるのは、安倍政権下の昨年2月に突然発せられた、全国の小中高校の一斉休校と、大規模イベント自粛の要請だった。政府の対策本部でさえ「現時点では必要ない」と判断していた方針が、首相の「鶴