【提言】「懐かしい地域」こそ未来へのヒント 哲学者・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・教授 内山 節 いまのところTPPは幽霊のようなものである。どのような内容になるのかが伝わってこない。TPP交渉はすべての関税を実質ゼロにし、締結地域ではその内部の国々が自由に経済活動ができるようにすることを目指しているが、例外措置をまったく認めないということではまとまらないだろうし、それぞれの国のさまざまな安全基準や社会保険制度にまで踏み込んで、すべてのルールを統一するというのも不可能だろう。それらの事柄がどうなるのかがさっぱりわからない以上、現状では幽霊という他ない。 GDP優先から転換し充足感のある社会を ◆TPPを考える視点とは しかしこの幽霊が現実の姿に変わったとき、どのようなことが起こるのかは推測できる。それは、世界をひとつのルールで、実際にはアメリカのルールで動かそうとする方向性が