ブックマーク / honz.jp (502)

  • 『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 「言葉が分かるとはどういうことか」を人工知能から考える - HONZ

    なんという僥倖だろう。この人の新作をこんなにも早く目にすることができるなんて。しかも、今回の作品もこんなにも個性的で、こんなにも心地よいものであるなんて。 ご存知でない方のためにまず説明しておこう。著者の川添愛は、『白と黒のとびら』『精霊の箱』というふたつの作品で熱狂的なファンを生み出した言語学者である。ふたつの作品は、「オートマトンと形式言語」「チューリングマシン」をそれぞれテーマとしていて、それらの基礎を学べる内容となっている。 驚くべきはそのスタイルだ。どちらも、「魔術師に弟子入りした少年が苦難を乗り越えながら成長していく冒険物語」という形をとっているのである。読者は、主人公とともに遺跡を探索し、土人形を討伐しながら、形式言語やチューリングマシンについての理解を深めていく。いうなれば、RPG感覚で学べる入門書。そんながはたしてほかにあっただろうか。 さて、そして今回の『働きたくな

    『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 「言葉が分かるとはどういうことか」を人工知能から考える - HONZ
  • 『人類はなぜ肉食をやめられないのか』250万年の愛と妄想のはてに - HONZ

    系がモテるわけ 「さあ、今夜はごちそうにしよう! 何がべたい?」 こう聞かれて、野菜料理を挙げるひとはまずいないだろう。ごちそうは肉料理に決まっている!(ベジタリアンを除いて) レストランでも、メインディッシュと言えば、肉か魚料理——つまり広義の「肉」料理——である。 肉(とくに赤身の)を多く摂れば健康に良くないことは、すでに数々の研究で知られている。また、地球環境への影響も大きく、肉は全温暖化ガスの原因のうち最大で22%を占める。 私たちの健康にも、地球環境にも良くない肉。それでも、いっこうに減る様子はない。それどころか、急速な経済成長をとげる中国やインドなどで、肉はすごい勢いで伸びている。また、米国などの先進国でも、肉の消費量は増えているのだ。 まるで人類は肉に取りつかれているとでも言うように。私たちは、肉に魅了され、肉を愛し、肉がやめられない。いったい、なぜ? ほかの

    『人類はなぜ肉食をやめられないのか』250万年の愛と妄想のはてに - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2017/06/16
    「欧米のように肉が豊富で疾患も多い社会を、栄養学者は「栄養転換ステージ4」と位置づけている。その次にやって来るのが、肉の量をもっと減らす「ステージ5:行動の変革」だ。」
  • 『平均思考は捨てなさい』 みんなちがって、みんないい - HONZ

    2017年5月に経済産業省が若手・次官レポートとして発表した「不安な個人、立ちすくむ国家」は、「結婚して、出産して、添い遂げる」、「正社員になり定年まで勤めあげる」という「昭和の標準的人生」が21世紀には一般的ではなくなったため、この標準に基づいて設計された日の制度や価値観が現代社会のあちこちに大きなひずみをもたらしているのだとしている。しかしながら、1950年代生まれにおいても定年まで正社員として勤めあげる人は34%に過ぎなかったという。彼らの人生が標準的なのだとすると、過半数のはずの66%の人々が歩んだ人生は例外的なものだったということだろうか。そもそも、一度しかなく、それぞれにバラバラのはずの人生の“標準”とは何を意味するのか。 『平均思考は捨てなさい』は、わたしたちの思考がどれほど平均や標準に縛り付けられているか、そしてその呪縛のためにどれほど多くの可能性が見過ごされてしまってい

    『平均思考は捨てなさい』 みんなちがって、みんないい - HONZ
  • 『バッタを倒しにアフリカへ』面白いっ! だけじゃないんです、 泣けるんです! - HONZ

    こ、こののレビューを書きたい。 先日クマムシ博士がめちゃくちゃ面白いレビューをアップしていたので、私立文系かつファーブル昆虫記を1巻で挫折した私ごときがレビューする意義は見いだせなかった。HONZには虫担当の塩田もいる。生物偏差値100超(!)の学生メンバー篠原だっている。浪速大学医学部教授だってレビュアーだ。とにかく虫に相応しいのは私ではない。 しかし、書きたいのだ。この胸いっぱいお腹いっぱいの気持ちを誰かに伝えずにはいられない。 書を読み返す。そしてクマムシ博士のレビューも読み返す。1つだけ、それも大事なことに触れられていないではないかっっ! 今回私はその点だけに絞ってレビューをしたいと思う。 面白いというのは何パターンかあると思う。ひとつは目を通すだけで笑えるもの、電車の中で広げたら最後あふれる笑みを回収しきれずに不審者としてツーホーされるタイプだ。今話題の『鳥類学者だからって

    『バッタを倒しにアフリカへ』面白いっ! だけじゃないんです、 泣けるんです! - HONZ
  • 『親鸞「四つの謎」を解く』 - HONZ

    親鸞には法然や日蓮と違い、宗派の開祖としての自伝的な書物は少ない。また90歳にも及ぶ長き生涯において、足跡に不明瞭なことも多々ある。それゆえに今日でも文人や知識者たちの研究の対象になっている。謎が多いのだ。そのことを改めて解きほごそうとしたのが書だ。中でも重要な四つの謎、「出家の謎」「法然門下に入門した謎」「結婚した謎」「悪の自覚の謎」をキーワードに、著者は親鸞の生涯に深く切り込み、スケールの大きな研究書かつ文学作品に仕上がっている。ミステリー小説のような趣がある。この「四つの謎」は親鸞を知るためには欠かせないものだが、そこに独自の見解と新しい発見もあって、興味をかきたてられる書物となっている。 そしてもう一つ、親鸞の謎を一段と深めているのは彼の言葉にある。その哲学的な言葉の解釈によって、わたしたちは彼の世界に引き込まれていく。書き残された文字が難解であればあるほど立ち止まり、思案する。

    『親鸞「四つの謎」を解く』 - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2017/05/26
    梅原猛氏著
  • 『ダイエットの科学』 ダイエットを始める前に先ず読むべき一冊 - HONZ

    ダイエットは現代人の最大の関心事の一つだ。多くの国で肥満が野火のように広がっていくに連れ、ありとあらゆるダイエット方法が世界中で発明されてきた。あまりにも大量のダイエットが開発されたため、その中から相反する2つを見つけるのは難しいことではない。脂肪の摂取を控えるべきだと訴えるダイエットもあれば、脂肪は好きなだけ摂ってよいというものもある。三を規則正しくべることを推奨する方法もあれば、一日一の方がより健康的なのだと謳うものもある。一体全体、わたしたちはどのようなダイエットをするべきなのか。 ロンドン大学キングス・カレッジ遺伝学教授である著者ティム・スペクターは、巷にあふれる多くのダイエットが神話に過ぎないことを、科学の力で明らかにしていく。政府が推奨する公的な栄養の摂取量ですら、そのほとんどには明確な根拠がないというのだから、どれほど裏付けのない手法が流布しているかは推して知るべしであ

    『ダイエットの科学』 ダイエットを始める前に先ず読むべき一冊 - HONZ
  • いざ萌えん、エロスしたたる『官能植物』 - HONZ

    あなたは植物にエロスを見出したことがおありだろうか?あるのなら、このの魅力をすでにご存じなのだから、読めばますます植物官能の深みにはまり込んでいかれるに違いない。それよりも、そんなことは考えたこともないごく普通の人にこそ、ぜひ手にとってもらいたい一冊である。読み終わった時、もはや植物の官能から逃れられなくなっているはずだ。 いきなりだが、このサボテンはどうだ。似ていないといえば似ていないが、似ていると思えばえらく似ている。その名も『珍宝閣』、はいそうです「ちんぽうかく」です。『成程柱(なるほどちゅう)』という別名もあるという。なんとなく、なるほどと頷きたくなる気持ちもわかる。で、英名は『Penis cactus』って、ホンマですか?それって『ちんこサボテン』ですやんか。 滑らかな質感で、大きさ、鈴口や雁首を思わせる先端から根元に向かって走る微かな筋(稜)、個体によりやや曲がりくねった円柱

    いざ萌えん、エロスしたたる『官能植物』 - HONZ
    agrisearch
    agrisearch 2017/05/26
    木谷美咲氏。。
  • ベストセラーを科学する──『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』 - HONZ

    書は、「ベストセラー小説に普遍的な法則は存在するのか?」という問いかけを、独自の判定モデルをつくりあげ検証した著者らによる一冊である。小説がヒットするかどうかは時の運という人も多いし、実際運が関与しない事象などこの世に存在しないともいえる。そうなってくると次に出てくる問いかけは運の割合はどの程度のものか? である。書はそれを分析してみせる。 手法のひとつを簡単に説明すれば、まず小説の特徴を抽出するアルゴリズムを用いて評価したいの各特徴を分類/定量化する。その後、ベストセラーと非ベストセラーを大量に読み込ませ、機械学習を用いてベストセラーの特徴を学んだアルゴリズムに、抽出した特徴を投入することでベストセラーになるかどうかを80パーセントの確率で判定することができる。これで分析できるのはどのトピックが売上に関連しているのかだが、書はその他にもプロット、キャラクタ、テーマ、そのらがどの程

    ベストセラーを科学する──『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』 - HONZ
  • 『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの - HONZ

    『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの解説 by 西垣 通 2010年代後半に入って、AI(人工知能)ブームの過熱ぶりは凄まじい。とりわけ、 その中核にあるシンギュラリティ(技術的特異点)仮説は、現代のグロテスクな神話と言ってもよいだろう。書『そろそろ、人工知能の真実を話そう』(原題は Le mythe de la Singularité、 2017)は、シンギュラリティが実際に到来するかどうかを冷静に見極めるだけでなく、 その背後にある文化的・宗教的なダイナミックスを、「仮像(pseudomorphose)」という概念にもとづいて容赦なくえぐり出してみせる。きびしい警告の書物である。 だが、著者は決してAI技術自体を否定しているのではない。むしろ、来のAI技術が、 シンギュラリティという怪しげな神

    『そろそろ、人工知能の真実を話そう』シンギュラリティ仮説の背後にうごめくもの - HONZ
  • 『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ

    書店内でいやでも目を引く、虫取り網をかまえこちらを凝視する全身緑色のバッタ男の表紙。キワモノ臭全開の書だが、この著者はれっきとした博士、それも、世界の第一線で活躍する「バッタ博士」である。書はバッタ博士こと前野ウルド浩太郎博士が人生を賭けてバッタのアフリカに乗り込み、そこで繰り広げた死闘を余すことなく綴った渾身の一冊だ。 「死闘」と書くと「また大袈裟な」と思われるかもしれない。だが著者が経験したのは、まぎれもない死闘だ。あやうく地雷の埋まった地帯に足を踏み入れそうになったり、夜中に砂漠の真ん中で迷子になったり、「刺されると死ぬことのある」サソリに実際に刺されたりと、デンジャーのオンパレードである。 なぜ、そこまでの危険を冒さねばならなかったのか。油田を掘り当てるためでも、埋蔵金を発掘するためでもない。そう。すべては「バッタのため」である。 昆虫学者に対する世間のイメージは「虫が好き

    『バッタを倒しにアフリカへ』ストイックすぎる狂気の博士エッセイ - HONZ
  • 「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 - HONZ

    『巨大ウイルスと第4のドメイン』を筆頭に魅力的なウイルス論、入門を書いてきた著者による最新作『生物はウイルスが進化させた』は、「生物」に対する見方を根底から覆す、最新のウイルス研究成果についての一冊だ。多くの野心的な仮説と、確かにそうかもと思わせる検証でぐっと惹きつけ、読み終えた時にはウイルスに対する考え方が大きく変わっていることだろう。 まさにそれによって、「生物とは何か」「ウイルスとは何か」、そして「生物の進化とは何か」を問い直す「コペルニクス的な転回」を余儀なくされる、そんな存在こそが「巨大ウイルス」なのかもしれないのである。 内容的にはいくらか過去作との内容の重複もあるが、ウイルスとは何か、細菌との違いといった基的なところの説明から、従来のウイルス観を覆す巨大ウイルスとは何か、その特異性とは──と話をつなげ、”そもそもウイルスの定義とはどうあるべきなのだろうか”と最終章にてこれま

    「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 - HONZ
  • 『クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説』血を吐くほど観察し続けながらも、ピュアな心を護り抜く - HONZ

    最近のHONZの流行りから言うと、鳥類学者だからといって鳥が好きとは限らないそうだが、クマムシの研究者はどうなのだろうか? HONZメンバー堀川 大樹が上梓した『クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説』は、ある意味「恋愛」として扱っても差支えないくらいだという。こちらも負けず劣らずバッタを愛するバッタ博士・前野 ウルド 浩太郎氏に、書の魅力を寄稿いただきました。(HONZ編集部) 研究者は、自分の研究対象を愛している者が多い。それが、動物であろうと、植物であろうと、無機物であろうとも。 書を読めば、クマムシ博士こと堀川大樹博士がクマムシを愛しているのがしみじみとわかり、溺愛っぷりを随所に見ることができる。ある意味、このは「恋愛」として扱っても差支えはないだろう。 書は、「クマムシ」にまつわる科学である。研究関係の文は「おかたい」ことが多く、繰り返し読み直し、反芻することでよ

    『クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説』血を吐くほど観察し続けながらも、ピュアな心を護り抜く - HONZ
  • 『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである - HONZ

    「HONZで紹介するって、どんな基準で選んでいるんですか?」そう聞かれることは結構多いのだが、いつも歯切れの悪い回答になってしまう。 むろん小説はのぞくとか、いかにもなビジネス書は紹介しないとか、ジャンルとしての縛りは色々あるのだが、それだけが重要なわけではない。要は、難解なサイエンスや分厚い歴史ばかりをスラスラ読みこなす小難しい集団、そんな風に思われることは絶対に避けたいのだ。 しかし今なら一冊のを差し出しながら、「こんなだよ」と自信を持って伝えることが出来るだろう。それが書『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』だ。 無駄に面白いーーこれ以上の贅沢が考えられるだろうか? 単に鳥類学の普及が目的というだけであれば、ここまで面白くする必要はなかったはずだ。著者の川上和人氏は、森林総合研究所で研究に勤しむ鳥類学者。以前『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』をHONZでもしつこいく

    『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである - HONZ
  • すべて捨てろ!『死してなお踊れ 一遍上人伝』 - HONZ

    書は、鎌倉時代の「踊り念仏」で知られる時宗の開祖・一遍上人の評伝だ。 開祖といっても人は死ぬまぎわまで、こんな活動は一代限りでやめろと門弟に釘をさしている。 仏教でお堅いのかと思いきや、全くそんなことはなく、著者は口語で語りかけてくるので読みやすい。そして一遍の怒涛を体感するだけでもエンターテイメントとして成立している。 一遍は、伊予水軍で名高い河野家の元武士だった。しかし他人を殺してでも家を守れ、財産を増やさねばと働くうち、身内同士で所領争いになり、挙句のはて殺し合いにまで発展してしまう。こんなのやってられねえ!と家も土地も、奥さんも子供も、財産をぜんぶ捨てて旅に出てしまった。 一遍の思想における究極は、「捨てる」ことにある。彼は富も地位も権力もすべて捨て、空っぽになり、生きながらにして往生しようと考えた。 しかし実際に家を出ると、奥さんと娘も出家して旅についてきてしまった。一遍は

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  • 行かなくてもいいくらいに解説されてるけど、やっぱり行きたくなってしまう『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』 - HONZ

    HONZの成毛代表、何を考えているのか、忙しいとぼやきながらも、今年はめったやたらとを出すらしい。大丈夫か。しかし、いちばん気合いがはいってるのはこのだ。なんせ、ADHDを誇る成毛代表が、国立科学博物館という同じテーマに固執して二冊目のを出すのだから。ただし、人に確認した訳ではありませんので、まぁ、いま巷に流行る忖度いうやつですわ。 しかし、相当に力がはいっているのは間違いない。案内される成毛眞、興奮しまくら千代子状態なのである。少なくとも私が知る限り、呑まずにこんなにご機嫌で楽しそうな顔をしてわざとらしいポーズをとるような男ではないのだから。 一冊目の科博は、当時の折原守副館長に日館を案内してもらうというのがメインであった。今回は、日館と双璧をなす地球館について、それぞれのセクションのエキスパートに教えを請うというスタイルだ。さすが成毛眞、二匹目のドジョウを狙うとはいえ、一

    行かなくてもいいくらいに解説されてるけど、やっぱり行きたくなってしまう『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』 - HONZ
  • 『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? - HONZ

    『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか?編集部解説 ネコ派も、イヌ派も、ご用心! あなたの性格や行動が知らないあいだに、腸内や脳などに住む寄生生物によって操られているとしたら? 「まさか、そんなことは!」と思うだろうか。近年、「神経寄生生物学」と呼ばれる分野の研究が明かしているのは、まさにそんなことが起こっている、しかもごく日常的に!である。 たとえば、世界中で3人に1人が感染していると言われるトキソプラズマ原虫。この微生物は主にネコからヒトへと感染し、脳に住みつく。 医学的には、感染しても妊婦などでなければさほど問題はないとされていた。しかし、心理学者や神経科学者らの研究では、人の気分や性格を変えてしまい、そのせいで感染者が危険な行動を取ったりすることがわかってきた。とくに男性では、規則を破り、人と打ち解けない傾向が強く、交通事故などにも

    『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? - HONZ
  • 側近の書いた「信長」 『信長公記(全)』 - HONZ

    家臣が同時代に書いた、織田信長の一代記『信長公記』。これを歴史小説家が現代語で訳したのが書だ。能寺の変で自害するまでの15年間がつぶさに記された、歴史資料としても、読み物としても第一級の一冊。これがまあ、おもしろくて一気読み! 時には歴史の海へ身を投げ出して、戦国時代にタイムトリップをしてみるのもいいぞ。 著者の太田牛一は、尾張の田舎(といっても、現在の名古屋市北区・春日井市界隈らしい)に1527年に生まれた。信長の家臣に仕える足軽から始まり、弓の腕を認められて弓3人、槍3人の信長の親衛隊に選ばれ、側に仕える身に。信長の家臣の与力だったとも言われ、正確には立場がはっきりしないところがあるものの、信長の生身を知る人物と思ってまちがいなさそうだ。 無学だったが、独学で学問を修めるほどの努力家で、日々見聞きしたことをメモしておき、それを80歳を過ぎてから編集して書をまとめたとか。信長が自害

    側近の書いた「信長」 『信長公記(全)』 - HONZ
  • 『発達障害』まずは正しい知識から。 - HONZ

    近年、アスペルガーやADHDといった発達障害が注目を集めている。書の冒頭でも述べられているが、テレビドラマの登場人物でも発達障害を持っていると思われる行動をとる人物が活躍する作品が増えている。 海外ドラマ『クリミナル・マインド』のDr.スペンサー・リードやBBC制作の『シャーロック』のシャーロック・ホームズなどは明らかにアスペルガー症候群の特徴を示しているし、日のドラマでは最近話題になった『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)の主人公もアスペルガーの特徴を示している。実は発達障害を持つ人は意外に多くASD(アスペルガーを含む自閉スペクトラム症)は人口の1%、ADHD(注意欠陥多動性障害)は人口の5~10%ともいわれている。 多くの人にその障害の存在が知られるようになったとはいえ、私たちが発達障害に対して正しい知識を持ったわけでも、発達障害を抱えた人たちを社会に受け入れて行くノウハウを手に

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  •  紙がない!どうしよう!?……安心してください、『葉っぱのぐそをはじめよう』 - HONZ

    学生時代、生物調査のために同級生たちと森でテント生活をしたことがある。当然、トイレはない。必然的に穴を掘ってそのへんにすることになるのだが、その方法には鉄の掟があった。 「紙は使うな、葉っぱで拭け」 ティッシュは簡単には分解しない。自然環境を学ぶ者として、紙を使わないことは最低限の自然への礼儀であった。 「たかが、野ぐそ」と侮るなかれ。適した葉っぱを見つけるには、鋭い観察眼と植物の知識が要求される。もし、トゲのある葉っぱだったら。見た目はOKでも、毒があったら。トゲや毒はなくても、せっかくならば保水力のあるやわらかな質感のものを使いたい。 こうして私たちは「究極の葉っぱ」を求めて観察し、図鑑を調べ、最適と思われる葉っぱをもつ植物が生える環境をさぐり、植物の知識だけでなく仲間同士の絆をも深めていった。情報交換しなければ、こんな極めて特化された用途を教えてくれる資料など、なかったからだ。 とこ

     紙がない!どうしよう!?……安心してください、『葉っぱのぐそをはじめよう』 - HONZ
  • 『ささやかな知のロウソク ドーキンス自伝2 科学に捧げた半生』訳者あとがき by 垂水 雄二 - HONZ

    このドーキンス自伝の第2巻は、精神の形成史を語った第1巻とはちがって、さまざまな活動を通 じて出会った人々との交友録が中心になっている。登場する絢爛豪華な顔ぶれとの交流を読みながら、 同世代の人間として、その住む世界のあまりの違いように圧倒される。 なによりも、英国を中心とした欧米には、現在でも「知的エリート社会」が厳然として存在するということを、いまさらながら思い知らされた。それは単に学者の世界だけの話ではなく、実業家、政治家、芸術家、宗教家、メディア関係者をすべて含む大きなサークルが形成されているのだ。「宮廷サロン」の伝統が今も生きているのだろう。 そうした伝統のなかで、すぐれた経営者がすぐれた教養人であることがわかる。ドーキンスに講座を寄付したチャールズ・シモニーを初めとして、ネイサン・ミアヴォルドやビル・ゲイツなどのIT

    『ささやかな知のロウソク ドーキンス自伝2 科学に捧げた半生』訳者あとがき by 垂水 雄二 - HONZ