ブックマーク / honz.jp (502)

  • 虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』 - HONZ

    昆虫は最強の生物である──と断言されると、人類じゃなくて? と疑問が湧いてくるが、まあ「最強」の定義次第といったところだろう。たとえば、人類はこの地球上に種そのものを脅かす天敵はいないわけで、その観点からいえば「人類は地球最強の生物」といってもいいだろう。 しかし、別の観点からすると、これまでに発見され、命名された昆虫は100万種、名前もついていないものも含めれば何千万種にも及ぶという膨大な数になる。仮に異星人が地球にやってきて、その支配領域の広さと個体数、種の多さによって「支配者」を決め、コンタクトを取ろうとしたら──その交渉相手は人類ではなく昆虫になるに違いない。著者も下記のようにとうとうと、節足動物である昆虫がいかに人類より素晴らしいかを述べてみせる。 ここで読者の皆さんに提唱したい。動物の体の形として優れているのは、外骨格のほうだ。有害な排泄物を体内に蓄積するのではなく体外に排出し

    虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』 - HONZ
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    agrisearch 2016/08/05
    「節足動物が陸上に上がった理由、昆虫が空を飛ぶようになった理由、完全変態誕生の経緯など昆虫を語る上で外せない「進化ポイント」が丁寧に解説されていく。」
  • 『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』解説 by 岸 由二 - HONZ

    現代生態学の核心的なテーマを扱う不思議なが登場した、というと、意外に思われるかもしれない。扱われているのは、自然回復論。外来種をどう理解し、評価するか、未来の自然保護をどのようなビジョンで考えるか、そんな話題ではないか。そのどこが現代生態学の基礎テーマにからんでいるというのだろう。 現代生態学の基礎テーマというと、まっさきに、ドーキンスの利己的遺伝子論や、やたらに複雑な数理生態学のことを連想する読者がいるかもしれない。それはそれで、正しいのだが、自然回復、自然保護などを扱う生態学のいわば道における基礎テーマは、すこし焦点が違う。きわめて重要な領域なのだが、とくに日の生態学の領域ではなかなか話題にするのも難しく、わかりやすい専門書もほとんどないのが実情だ。そんな、わかりにくい世界について、「外来種をどう評価するか」という現代保全生態学

    『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』解説 by 岸 由二 - HONZ
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    agrisearch 2016/07/14
    岸由二・慶応義塾大学名誉教授。「有害」生物をつくり出した学者は責任が取れるかどうか。https://thepage.jp/detail/20160502-00000013-wordleaf
  • 『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実』日本の消費者はドルーカー氏の警鐘を どう受け止め、どう生かせばよいか - HONZ

    『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実』日の消費者はドルーカー氏の警鐘を どう受け止め、どう生かせばよいか巻末解説 ファインマンの暗示と「不確かな科学」の政治化 米国の著名な物理学者のR・P・ファインマン博士に、『科学は不確かだ!』という講演(大貫昌子訳、岩波現代文庫)がある。「科学者は自分の理論の誤りを、決して隠そうとはしません。それどころか彼の進歩と興奮は、実はまったくその逆のところ、つまり誤りを発見する過程にあるのです」。一方「人類が犯す唯一の過ちは、……答えがわかったと決め込んでしまうことです。……僕らはそんなに賢くありません」と博士は語っている。 博士は生物科学についても言及する。過去200年において科学は急速な発展を遂げ、現在「生物科学はもっとも驚くべき発見の寸前」にある。しかし「近い将来、生物学の発達が前代未聞の問題」を起こすと暗示する。博士はここでオルダス・ハクスリー著『す

    『遺伝子組み換えのねじ曲げられた真実』日本の消費者はドルーカー氏の警鐘を どう受け止め、どう生かせばよいか - HONZ
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    agrisearch 2016/06/23
    「私たち(生活クラブ生協)はまずGMOの学習から始めた」・・
  • 『「こつ」と「スランプ」の研究』「体感」に「ことば」を、「ことば」に「体感」を - HONZ

    何やらそそられるタイトルだ。とらえどころのない「こつ」と「スランプ」の正体に、いかにして迫っていくのか。そもそも、それらは研究できるものなのか。期待と不安が入り混じるまま読み進めた先に待っていたのは、思わぬアプローチと意外な着地点だった。 実は、「こつ」や「スランプ」についての話は書の一面に過ぎない。研究対象とされているのはより広い領域、「身体知」である。 身体知とは、シンプルにいえば「からだに根ざした知」だと著者は言う。自転車の漕ぎ方やゴルフのドライバーなどが分かりやすい例だ。いわゆる「暗黙知」との違いは明確に書かれていないが、読んだ限りでは、「からだで理解する」というニュアンスをより強調した言い方が「身体知」だと思われる。 「からだに憶え込ませる」という言い回しがあるように、身体知は反復練習の中で徐々に感覚を掴むことで身につくもので、一見「ことば」は邪魔なように思える。自分の経験に照

    『「こつ」と「スランプ」の研究』「体感」に「ことば」を、「ことば」に「体感」を - HONZ
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    agrisearch 2016/06/21
    「誰かと完全に「同じ」ということがないからこそ、自分なりのことばで、自分なりの理解を作り上げていくことが、身体知を形成する上で重要になる。」
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    『あず☆らいず!!』第7話『大切なもの』 2018年11月19日 福岡に実在するバンド「AZLiGHTZ(アズライズ)」。 チヒロ(Vo.)、ナオプ(Dr.)、サナ(Gr.)、ノゾミ(Ba.)のメンバー4人は全員がアニヲタである。 フェス会場で共演バンドとケ...

    マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー
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    agrisearch 2016/06/21
    多加子はオクトパス!?『戦慄!!タコ少女』
  • 『牛を飼う球団』「高知ファイティングドッグス」が生んだ地域創生物語 - HONZ

    プロ野球にはNPB(日野球機構)の12球団、いわゆるパリーグとセリーグのほかに、独立リーグという存在がある。2004年のプロ野球再編問題以降、地域密着型の野球チームが設立され、その中の一つ、四国アイランドリーグプラス〈四国IL〉のひとつ「高知ファイティングドッグス」が書の舞台である。 四国アイランドリーグプラスは2005年に設立された。高知は、香川オリーブガイナーズ、徳島インディゴソックス、愛媛マンダリンパイレーツと毎年優勝を争っているのだが、このところ低迷が続いている。(2016.5/5現在 3位) 独立リーグの経営は容易ではない。年間にかかる費用は1億円前後。それで選手の給料から審判やスタッフの費用をすべて賄わなければならない。無名のチームだから集客もままならない。 ではなぜ独立リーグが存在するかといえば、ドラフトで指名されなかった者やなんらかの事情で学校を中退したり、社会人チーム

    『牛を飼う球団』「高知ファイティングドッグス」が生んだ地域創生物語 - HONZ
  • 『科学の発見』なぜ、現代の基準で過去を裁くのか 解説 by 大栗 博司- HONZ

    書は、物理学者スティーヴン・ワインバーグがテキサス大学で行ってきた科学史の講義に基づいた著書の邦訳である。『科学の発見』というタイトルが示すように、個々の科学的事実の発見の歴史ではなく、科学の方法それ自身の発見に重点を置いていることが特徴だ。ワインバーグは、「現代科学の実践を見たことがない人にとって、その方法は何一つとして明らかではないのである」と語り、人類がいかにして科学の方法を習得したのかを明らかにしようとする。 一読して驚くのは、ワインバーグが、科学の方法が確立する以前に自然を探求していた人々の間違いを、遠慮会釈なく指摘していることだ。古代ギリシアの「タレスからプラトンに至る思想家」は、「誰も、自分の理論を実際に確かめようとしていない」。彼らは、「自分が真実だと信じていることを明確に述べるためというよりは、美的効果のために選択された文体」を使う詩人であり、観察や実験によって自らの理

    『科学の発見』なぜ、現代の基準で過去を裁くのか 解説 by 大栗 博司- HONZ
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    agrisearch 2016/06/17
    「ワインバーグはウィッグ史観の確信犯である」
  • 「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!系統分類から進化を探る」 分類学に心酔した男の圧倒的成長に迫る - HONZ

    「テヅルモヅル」という生物をご存知だろうか。体の中心から五の腕を伸ばし、その各々の腕を枝分かれさせ、まるで触手のようにうねうねと動かしながら海水中のプランクトンを捕獲し、それらを栄養源として生息している動物だ。腕を広げると、大きなものでは1メートルを超える圧倒的な存在感を持つモヅルもいるようだ.その様子にちなんで、一部の種は学名にギリシャ神話の「ゴルゴン」を冠している。見た目・形ともに異彩を放つこのテヅルモヅルだが、研究者の数が限られていることもあり、未だ生殖発生や生活史などの基的な生態すら明らかにされていない。 書は、そんな謎多きテヅルモヅルを研究する茨城大学の岡西政典助教が綴る研究日誌である。珍しい生き物の研究者と聞くと、中高生時代からマニアックな知識を持ちピンポイントで研究室を選んだ人というイメージを持つかもしれないが、著者はそうではなかった。大学初年度はバイトとサークルに明け

    「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!系統分類から進化を探る」 分類学に心酔した男の圧倒的成長に迫る - HONZ
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    agrisearch 2016/06/17
    「茨城大学の岡西政典助教が綴る研究日誌」
  • 木は二度生きる 『樹木と木材の図鑑』 - HONZ

    中学2年生の頃に屋で偶然出会ったのが、荘子だった。「人皆知有用之用 而莫知無用之用也」(荘子 内篇)そこには、人の役に立たないがゆえに天寿を全うする、樹木のことが書かれていた。高度成長の負の遺産や受験戦争に心を痛めていた私は、「かくありたい!」と膝を打ち、その道行きをはじめた。といっても、有用になるのを避け友人宅に入り浸って麻雀を始めただけだ。翻って書は、101種の「有用材」を写真と文章で紹介した、人と木の歴史がつまった図鑑だ。植物図鑑と材木図鑑の良さを兼ね備えた、稀有な一冊である。 見開きに一樹種で、非常に見やすい。立木、葉、樹皮、建築物、家具・・・600点にも及ぶ写真のほとんどが撮り下ろしで、しかもページレイアウトが樹種ごとに違う。表紙や紙質など工夫が凝らされていて、見るからに愛情の産物であることがわかる。有用であることも、なかなか隅におけないものだ。しかも、これだけ手が込んでいて

    木は二度生きる 『樹木と木材の図鑑』 - HONZ
  • 奇跡の自然に行ってみた!『「奇跡の自然」の守りかた――三浦半島・小網代の谷から』前編 - HONZ

    きっかけは、5月13日の足立真穂のレビュー『「奇跡の自然」の守り方――三浦半島・小網代の谷から』。書は「地域の自然保護」という決して派手ではないテーマにもかかわらず、なんと刊行からわずか10日で重版!したそうなのです。 ビジネスとサイエンスが融合した新しい自然保護のあり方を示す内容も素晴らしいのですが、きっと小網代そのものの魅力も読者をひきつけたのではないでしょうか? これはもう、行って確かめるしかないですね。 森から湿地帯、そして海へ――。夜は『「奇跡の自然」の守り方』の著者、岸由二先生&柳瀬博一さんと一緒にゲンジボタルの観察会。久しぶりの活動記は、盛りだくさんの自然観察レポートです! 5月28日土曜日。曇り。品川から電車で1時間半ほど。ここは三浦半島の京浜急行三崎口駅。

    奇跡の自然に行ってみた!『「奇跡の自然」の守りかた――三浦半島・小網代の谷から』前編 - HONZ
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    いの快感が忘れられない『人魚姫のごめんねごはん』 2018年11月19日 僕はありがたいことにべ物の好き嫌いがないので、お肉も野菜も大好物ですが、魚や貝といった海鮮も大好きです。 なにせ魚介類は種類も豊富だし、調理方法で味も千変万化。それこそ毎日べたって飽きません。...

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    agrisearch 2016/06/16
    「ハレンチ学園」。。
  • 『恐竜はホタルを見たか』光る生物の進化の歴史 - HONZ

    サイエンスの面白さが存分に味わえる一冊だ。 タイトルに惹かれてつい手にとった一冊だったが、ホタルを題材にここまで科学の不思議さと面白さを紹介できるポピュラーサイエンスの作者がいるとは想像だにしなかった。流麗で平易なことばで科学の謎を解き明かす著者の文章力は、『ワンダフル・ライフ』の著者でポピュラーサイエンスの巨匠スティーブン・グールドを彷彿とさせる。 白亜紀の恐竜が初期のホタルと併存して生きていたという想像するとなんだか楽しくなる薀蓄をはじめ、書にはホタルの発光メカニズム、発光の生物学的役割、発光生物の進化の歴史が詰まっている。ホタルと恐竜のかと思いきや知らず知らずのうちに生物の深みにはまり込んでしまう一冊だ。 書を読みすすめていくと上手く著者に手のひらで転がされているのを感じることだろう。ところどころで「なぜ」と疑問を抱く箇所をわざとつくり、読者を上手く誘導しながら生物学の不思議

    『恐竜はホタルを見たか』光る生物の進化の歴史 - HONZ
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    agrisearch 2016/06/16
    「コペポーダという甲殻類がもつセレンテラジンという基質が多種多様な海洋発光生物の源になっているというのが著者の見立てである」
  • あなたの知らない動物の生態 『ざんねんないきもの事典』 - HONZ

    ざんねんないきものとは一生けんめいなのに、 どこかざんねんないきものたちのことである。 世の中にはものすごく不便そうな体を持っている生き物や、どうしてそんな大変そうな生き方をしているの?って思う生き物。またそんな能力を持っていてどうするの?と思ってしまうような生き物が多数存在している。進化というのは一方通行であるがゆえに進化の過程において、かつては必要だったけれど、いまは不必要になってしまった能力や特徴をもっている生き物というのがたくさんいるのだ。たとえば誰もが知っているパンダは、ササの葉ばかりをべているイメージがあると思う。 しかし、パンダがべているササにはほとんど栄養がなく消化も悪いそうだ。パンダはクマの仲間なので雑である。動物園では肉や果物もたべている。だからわざわざ栄養のないササをたべる必要性はないのだ。それなのにササをべてしまう習性は、過去に他の動物に山を追われ、ササしか

    あなたの知らない動物の生態 『ざんねんないきもの事典』 - HONZ
  • 『人類進化の謎を解き明かす』 - HONZ

    「気のおけないつながりは150人まで」というダンバー数などでおなじみ、ロビン・ダンバー氏待望の新刊が今月下旬に発売される。前著『友達の数は何人?』から実に5年ぶりとなる作は、人類進化の謎を「社会脳」と「時間収支」から解き明かす一冊。その読みどころを一足早く、版元の編集部に解説いただきました。(HONZ編集部) 社会脳と時間収支が、ヒトの進化の鍵となる 人類進化の道筋は、穴ぼこや断層だらけだ。新たな化石の発見や、DNAの解析などによって、従来の説もたびたび変わっていく。また、いくら遺跡や骨などが発見されたところで、物として遺らない「心(認知)」や「社会的行動」のありようについては、類推するしかない。かくして、ヒトの進化の長い道のりには、まだまだ多くの謎が相変わらず残されたままだ。 書は、従来の「骨と石」といった証拠に頼る研究とはまったく異なる斬新なアプローチによって、こうした進化の謎を一

    『人類進化の謎を解き明かす』 - HONZ
  • 『されど人生エロエロ』人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた - HONZ

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    agrisearch 2016/06/03
    作者:みうら じゅん
  • 『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』悲劇への道は、共感の心で敷き詰められている - HONZ

    SNSに功罪はあれど、「共感をベースにした評判社会」という言葉には何か否定できないものがある。他人の喜びや悲しみといった感情に寄り添うことができ、周囲からどのように思われているか可視化される状態であれば、さぞかし理想的な社会になるはずだ。 しかし、実態はどうだろうか。人々のつながりは誹謗中傷や負の感情を運ぶ時の方が勢いが強く、よりスキャンダラスな方向へと向かっているような印象も受ける。ならば、世の中は「共感をベースにした評判社会」とは違う方向へ進んでいるのだろうか? 書はこのような疑問に対して、明快に回答する。むしろ、これは共感をベースにしているからこその動きであると説くのだ。驚くのはそのメカニズムを、1942年と1950年に起きた2つの冤罪事件(浜松事件と二俣事件)、そして1759年に出版されたアダム・スミスの『道徳感情論』という2種類の要素から解き明かしていることだ。 なぜ、SNS

    『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』悲劇への道は、共感の心で敷き詰められている - HONZ
  • やりたいからやる『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』 - HONZ

    書は16人の在野研究者の生き様を紹介するというシンプルな構成だ。謎の同人ウェブメディア「En-Soph(エン–ソフ)」での連載シリーズ「在野研究のススメ」を、再構成しまとめたもので、すべての章は読み切りだ。 論文の数や掲載誌のインパクトを追求する一般的な研究者とは異なり、我が道、我が学問を行く在野研究者たち。制度や固定観念に囚われることのない、彼らの研究内容は独特で、鋭さと危うさを兼ね備えた魅力を持つ。しかし、研究内容にもまして、興味深いのは、その生活事情や金銭面の工面である。そこはしなやかで、したたかに、自分のやりたいことを、やり続けるための作戦がある。 生活のできる限りを研究に捧げるために、利用できるリソースを徹底的に活用するストイックな姿勢を崩さないのは、研究のために「どれくらい働いたらいいか?」という問いを立てた三浦つとむである。一方で、親の仕送りに寄生し、弟に呆れられるまで海外

    やりたいからやる『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』 - HONZ
  • 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 豆から生まれたメンタリティ - HONZ

    ある時をきっかけに、べ物のイメージがガラリと変わることがある。個人的に最も驚いたのは、はじめて四川料理の店で辛い麻婆豆腐をべた時のことだ。俺は今まで何をやっていたのだろうかという激しい後悔と同時に、麻婆豆腐というものへの理解が革命的に変わっていくことを実感した。 高野秀行にとっては、それが納豆であったのだろう。ある時、ミャンマー北部のカチン州での取材中にべた、日のものと全く変わらない納豆卵かけご飯。しかも現地の人たちは納豆のことを、業界人ばりに「トナオ」と呼んでいるではないか。さらにその後、タイ、ネパール、インド、ブータンといった他のアジア諸国においても、納豆もしくは納豆もどきのべ物と何度となく遭遇することになる。これを見逃す高野ではなかった。 書は「納豆の起源と変遷を解き明かす」というテーマを目的に、アジアの奥地から日の東北地方、はたまた固定観念の外側までを探検した一冊であ

    『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 豆から生まれたメンタリティ - HONZ
  • 悪魔が仕掛ける軍拡競争 『カッコウの托卵 進化論的だましのテクニック』 - HONZ

    カッコウ、である。見たことがあるような気もするが、記憶は定かでない。しかし、「♪静かな湖畔の森の陰からもう起きちゃいかが」と鳴くという童謡のおかげで、その名前はよく知られている。なんとなく爽やかだが、そんなイメージとは裏腹に、カッコウは『托卵』という眉をひそめたくなるような方法によって繁殖することで有名な鳥でもある。 托卵というのは「鳥が他種の鳥の巣に産卵して、仮親に卵を抱かせひなを育てさせる習性(ウィキペディア)」のことだ。カッコウは、ヨシキリなど他の種類の鳥の巣に卵を産み、自分では卵を温めたり、孵った雛に餌を与えたりすることのない、勝手な鳥なのだ。最近では、好きな男の子どもを産んで、金持ちの男に育てさせる托卵女子とかいうのもいるらしい。托卵女子も悪魔っぽいが、カッコウの雛もまるで悪魔だ。 カッコウは、宿主の巣、すなわちカッコウの雛を育てさせられる鳥の巣、に卵をまぎれこませる。産み落とさ

    悪魔が仕掛ける軍拡競争 『カッコウの托卵 進化論的だましのテクニック』 - HONZ
  • 新しい環境保全の教科書『「奇跡の自然」の守りかた』 - HONZ

    東京、品川駅から電車で1時間半、終点の三崎口駅から歩いて30分。小網代は、都心からおよそ60キロの三浦半島にある自然の楽園だ。コンクリートで固められていく首都圏にありながら自然がまるごと残っており、しかも、誰でも歩ける身近な場所として大人気だ。なぜそんな「奇跡」が起きているのだろう? 「奇跡の森」。首都圏でも可能な環境保全の好例として、そう評される小網代の森だが、そこに長年かかわってきたふたりが、書の書き手だ。一般の人が気軽に入れるようになるまでの丁寧な保全の経緯と、実際に私たちが出かけた際の森の見所をまとめている。 そのふたりとは、進化生態学を長年研究されてきた岸由二さんと、普段は出版社で編集や広告業務に携わる柳瀬博一さんだ。岸さんの名前を初めて知ったのは、大ベストセラーとなった『利己的な遺伝子』(リチャード・ドーキンス著)の翻訳だったように思う。ほかにも『人間の性について』(エドワ

    新しい環境保全の教科書『「奇跡の自然」の守りかた』 - HONZ