ブックマーク / www.nikkei-science.com (60)

  • 縄文人の痕跡を現代人に探る

    1万6000年前から3000年前まで日列島で縄文文化を支えた縄文人の遺伝子はいま,どこにあるだろう。縄文人集団と,大陸から渡来した東アジア人集団が混血して現在の日人集団となった。縄文的特徴は薄くなったが,その遺伝子のかけらは今も日人集団の中に存在している。縄文人のかけらを現代日人のゲノムから抽出しようという研究が進んでいる。 東京大学大学院理学系研究科でヒトゲノム多様性をテーマに研究している渡部裕介と大橋順のグループは2023年,日の現代人ゲノムから縄文人に由来するとみられる変異を特定し,それに基づいた「縄文人度合い」で日州の各地域の差異を見ることに成功した。 さらに,縄文人由来変異は今の日人に具体的に表れている形質,つまり表現型を見る新しい視点にもつながる。日人のゲノムを「縄文人由来」と「渡来人由来」に分類し,これまでのゲノムワイド関連解析でわかってきた60種類の量的形

    縄文人の痕跡を現代人に探る
    agrisearch
    agrisearch 2024/01/05
    「日本の現代人ゲノムから縄文人に由来するとみられる変異を特定し,それに基づいた「縄文人度合い」で日本本州の各地域の差異を見ることに成功した」
  • 縄文犬とニホンオオカミの深い関係

    イヌは最も古くから人間のそばで生きてきた動物だ。2万~4万年前にユーラシア大陸でハイイロオオカミから分かれて,猟犬として飼い馴らされた。日列島には縄文時代に入ってきたとする説が有力で,国内最古のイヌの骨は神奈川県の夏島貝塚から出土した約9500年前のものだ。愛媛県の上黒岩岩陰遺跡では7200~7400年前にイヌを埋葬していたとされる骨も見つかっていて,考古学的な史料からは「縄文犬」が狩猟採集を営む縄文人にとって欠かせない存在だったことがわかる。 最近の研究では,日列島におけるイヌの変遷も少しずつ見えてきた。遺跡から出土した縄文犬の骨からミトコンドリアDNAを抽出して配列を調べたところ,全て縄文犬だけに見られる固有のタイプで,1万1500年前に大陸で他のタイプから分岐していることがわかった。夏島貝塚の年代も考慮すると,イヌは9500~1万1500年前の頃に日列島に入ってきたとみられる。

    縄文犬とニホンオオカミの深い関係
  • 古くからの抗菌剤〜日経サイエンス2024年2月号より

    蜂蜜と酢を混ぜた伝統薬は単独よりも殺菌効果がはるかに高い 蜂蜜と酢を混ぜ合わせた「オキシメル」は伝統的な薬で,大昔からあった。中世の薬屋が売り,ヒポクラテスが処方し,医師で哲学者でもあったイブン・スィーナー(Ibn-Sīnā)はその効果を激賞した。現代ではそのような混合物は傷口につけるよりもサラダにかけるべきものに思えるが,抗生物質耐性菌が増えつつあるなか,難治性の感染症と闘う新たな方法が強く求められている。最近のMicrobiology誌に発表された研究は,この点でオキシメルが実際に役立つ可能性があると報告している。 「現在,蜂蜜と酢酸はそれぞれ単体で創傷感染の治療に使われている」が,通常は混ぜて使うことはないと,この研究論文の共著者で伝統薬の抗菌特性を研究している英ウォーリック大学の学際研究者コネリー(Erin Connelly)はいう。蜂蜜は高い糖濃度と酸性度で細菌にストレスを与えて

    古くからの抗菌剤〜日経サイエンス2024年2月号より
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    agrisearch 2024/01/05
    「蜂蜜と酢を混ぜた伝統薬」「オキシメルによって死滅したバイオフィルム中の細菌は酢単体の場合に比べて1000倍,蜂蜜単体の10万倍近くに上った」
  • アズキ 日本から大陸に渡った作物

    白菜に葱,大根,人参──こうした野菜はどれも日卓に欠かせないものだが,来歴をたどれば全て原産地は海外だ。たとえば白菜の原産地は中国北部,人参の原産地はアフガニスタンやイランのあたりとされる。大陸から海を渡ってきた縄文人や渡来人と同様,野菜もまた海の彼方からこの日列島へやってきたのだ。しかしゲノム解析によって,赤飯やあんこに使われるアズキが縄文時代の日列島で作物に変化し,アジアの大陸地域へ広まった作物であることが明らかになった。この研究を行った,国立研究開発法人農業・品産業技術総合研究機構(農研機構)上級研究員の内藤健に話を聞いた。 続きは2024年2月特大号の誌面でどうぞ。 協力 内藤 健(ないとう・けん) 農研機構遺伝資源研究センター上級研究員。農業への応用の観点から,海沿いや乾燥地,寒冷地など様々な環境に適応する野生アズキ類を幅広く研究している。 サイト内の関連記事を読むゲ

    アズキ 日本から大陸に渡った作物
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    agrisearch 2024/01/05
    内藤健氏「農研機構遺伝資源研究センター上級研究員。農業への応用の観点から,海沿いや乾燥地,寒冷地など様々な環境に適応する野生アズキ類を幅広く研究している」
  • 世界は局所的かつ実在的,ではない

    この半世紀における最も衝撃的な発見の1つは,私たちの住む世界が局所的かつ実在的であるという,これまで当然とされていた前提が覆ったことである。ここでいう「実在」とは,物体が観測とは無関係に確定した性質を持つ,という意味だ。一方「局所的」とは,物体は周囲の環境からしか影響を受けないし,その影響が光より速く伝わることはない,ということを意味する。ところが量子物理学の最前線の研究は,この2つの性質が両立することはありえないことを明らかにした。 この発見は,私たちの日常的な経験とは大きく違っている。かつてアインシュタインはこれを嘆き,友人に「君は当に,君が見ていないときには,月はそこにないと思うのかい?」と問うたという。作家ダグラス・アダムスの言葉を借りるなら,局所実在の前提を捨てることには「多くの人がたいへん立腹したし,よけいなことをしてくれたというのがおおかたの意見だった」(『宇宙の果てのレス

    世界は局所的かつ実在的,ではない
  • アインシュタイン・タイル発見〜日経サイエンス2023年11月号より

    ある数学愛好家が発見した帽子に似た図形に数学界が沸き立っている 英ヨークシャー在住の数学愛好家スミス(David Smith)が,とある13角形を発見した。数学者による探索を何十年もかいくぐってきた図形だ。いかつい帽子に似たその形(次ページの図で太線で描かれている図形)は,ドイツ語で「1個の石」を意味する「アインシュタイン」という名で呼ばれている。アインシュタイン・タイルを使うと浴室の床を隙間なく敷き詰めることができ,しかも同じパターンが繰り返されることが決してない。浴室の床だけでなく,どんな平面でも,それが無限に広がっていても,これが可能だ。 非周期的にしか敷き詰められないタイル 数学者は長年,敷き詰めが必ず非周期的になる「強非周期的タイル張り」を実現するタイル形状を探し求めてきた。まず見つかったのは形状が様々に異なるタイルのセットだった。1964年に発見された最初のセットは2万426種

    アインシュタイン・タイル発見〜日経サイエンス2023年11月号より
  • 2023年ノーベル化学賞:量子ドットの発見と合成に貢献した3氏に

    2023年のノーベル化学賞は,「量子ドットの発見と合成」の業績で米マサチューセッツ工科大学のムンジ・バウェンディ(Moungi Bawendi)教授,米コロンビア大学のルイス・ブルース(Louis Brus)教授,旧ソビエト出身のアレクセイ・エキモフ(Alexei Ekimov)氏の3氏に贈られる。 高性能ディスプレー,安価な太陽電池,体内の物質動態を追いかける蛍光マーカーなど,今,極めて幅広い技術に応用されつつあるのが量子ドットだ。量子ドットとは,直径が数ナノメートルから数十ナノメートル(ナノは10-9,つまり10億分の1)ほどの半導体の微粒子のことだ。 物質をナノサイズに縮めると,中の電子が狭い範囲に閉じ込められ,物質の特性が大きく変わることは,量子力学が確立して間もない1930年代から理論的に予測されていた。 1980年代前半,旧ソ連の研究者エキモフ氏は,塩化銅を同じだけ添加した色ガ

    2023年ノーベル化学賞:量子ドットの発見と合成に貢献した3氏に
  • 2023年ノーベル物理学賞:物質中の電子の動きを解析する「アト秒の科学」を切り開いた3氏に

    2023年のノーベル物理学賞は「物質中の電子ダイナミクスを研究するためのアト秒パルス光の生成に関する実験的手法」に対して,米オハイオ州立大学のピエール・アゴスティーニ(Pierre Agostini)名誉教授,マックス・プランク量子光学研究所のフェレンツ・クラウス(Ferenc Krausz)教授,スウェーデン・ルンド大学のアンヌ・ルイリエ(Anne L’Huillier)教授の3氏に授与される。 電子は文字通り目にもとまらぬスピードで物質中を移動する。その動きを撮影するカメラがあれば,様々な物理現象の解明や材料開発に役立つ。しかしそのためには,ごく短い時間だけ光る「フラッシュ」が必要だ。フラッシュが光る時間が長いと,その間に電子が動き回ってブレてしまう。 まず,1980年代の後半に原子のレベルで化学反応を捉える手法が登場した。フェムト(10-15,つまり1000兆分の1)秒だけ光るレーザ

    2023年ノーベル物理学賞:物質中の電子の動きを解析する「アト秒の科学」を切り開いた3氏に
  • 昆虫に心はあるか ハチが感じる喜びと苦痛

    1990年代初頭,独ベルリン自由大学の博士課程の学生だった私はハナバチにおける色覚の進化のモデル化に取り組んでおり,植物学の教授に花の色素について尋ねたことがあった。ハナバチに合図を送るために花が色を作り出す自由度がどの程度あるのかを知りたかったのだ。彼は私と議論するつもりはないといくぶん不機嫌な様子で答えた。理由は,私が所属していた研究室が生きたミツバチに対して侵襲的な手法を用いていたからだ。その教授は昆虫には苦痛を感じる能力があると固く信じていた。私はこりゃダメだ,この先生は正気じゃないと諦めて彼の研究室を後にしたのを覚えている。 当時は私の考え方が主流派だった。苦痛は意識的経験であり,多くの学者が意識は人間に特有のものだと考えていた。しかし,数十年にわたってハナバチの知覚や知能を研究してきたいま,私はベルリンの植物学教授は正しかったのではないかと考えている。 この間,ハナバチなどいく

    昆虫に心はあるか ハチが感じる喜びと苦痛
  • 日本の実験装置 JT-60SA 稼働へ

    核融合の実現を目指した巨大実験装置の準備が,日と欧州で佳境に入っている。茨城県那珂市の量子科学技術研究開発機構(QST)に日欧共同で建設した核融合実験装置「JT-60SA」は,5月末に試験運転を開始した。超電導コイルが作り出す強い磁場によってプラズマをドーナツ形の空間に閉じ込め,模擬燃料の重水素2つを融合してエネルギーを発生させる。 装置は2020年に完成したが,試験運転を始めたところ,電流を流す電路の絶縁が劣化し放電を起こすトラブルが発生した。問題箇所を洗い出し,100カ所以上を補修して,2年2カ月ぶりに試験運転の再開にこぎつけた。今秋にプラズマの生成実験を開始する見通しだ。 一方,日,米国,欧州,ロシア韓国中国,インドの7極が共同で南フランスで開発を進めている国際熱核融合実験炉ITERは,建設が全体の8割まで進み,その巨大な姿を現し始めた。2025年にプラズマの生成実験を開始し

    日本の実験装置 JT-60SA 稼働へ
  • 2022年ノーベル生理学・医学賞:絶滅したヒト族のゲノム解析と人類進化の解明で独のペーボ教授に

    2022年のノーベル生理学・医学賞は,絶滅したヒト族のゲノム解析と人類進化の解明における功績で,独マックス・プランク進化人類学研究所のペーボ(Svante Pääbo)教授に授与される。 我々はどこから来たのか。今から約7万年前にホモ・サピエンスの集団がアフリカを出て,世界各地に広がっていったというのが定説だ。ペーボ教授は,世界各地から出土した古代の骨に含まれるゲノム配列を解析して現代の人類のゲノムと比較。我々のゲノムに,すでに絶滅したヒト族(ホミニン)であるネアンデルタール人や,最近新たに発見したデニソワ人の遺伝子が残っていることを見いだした。このことはアフリカを出たホモ・サピエンスがネアンデルタール人やデニソワ人とともに暮らして混血していたことを意味しており,人類史研究に衝撃を与えた。 何十万年も前の昔の骨にもDNAは残っているが,その配列を読むのは難しい。DNAが細かくちぎれて変質し

    2022年ノーベル生理学・医学賞:絶滅したヒト族のゲノム解析と人類進化の解明で独のペーボ教授に
  • 2022年ノーベル物理学賞:量子もつれ光子を用いたベルの不等式の破れの実験と量子情報科学の先駆的研究で欧米の3氏に

    2022年10月5日 2022年ノーベル物理学賞:量子もつれ光子を用いたベルの不等式の破れの実験と量子情報科学の先駆的研究で欧米の3氏に 2022年のノーベル物理学賞は,量子もつれ光子を用いたベルの不等式の破れの実験と量子情報科学の先駆的研究で,仏パリ・サクレー大学のアスペ(Alain Aspect)教授,米のクラウザー(John Clauser)博士,オーストリア・ウィーン大学のツァイリンガ−(Anton Zeilinger)教授に授与される。 量子力学によれば,2つの物体を相互作用させることで,物理的な性質を相関させることができる。例えば2つの光子の偏光を互いに直交させる,量子コンピューターの量子ビット2つが同じ値を取るようにするなどで,これを「量子もつれ」と呼ぶ。単に性質が相関するだけなら珍しいことではないが,量子もつれが特別なのは,もつれ合った2つの物体の性質が,測定するまで具体的

    2022年ノーベル物理学賞:量子もつれ光子を用いたベルの不等式の破れの実験と量子情報科学の先駆的研究で欧米の3氏に
  • 2020年ノーベル生理学・医学賞:C型肝炎ウイルスの発見で米などの3氏に

    2020年のノーベル生理学・医学賞は,C型肝炎ウイルスを発見した功績で,米国立衛生研究所(NIH)のオルター(Harvey Alter)名誉研究員,カナダのアルバータ大学のホートン(Michael Houghton)教授,米ロックフェラー大学のライス(Charles Rice)教授の3氏に授与される。 世界保健機関(WHO)によると,慢性肝炎を起こすB型およびC型肝炎は,世界に3億人以上の患者がおり,年間130万人が死亡している。1960年代までは手術や輸血によって蔓延し,「輸血後肝炎」とも呼ばれた。1967年に米国立衛生研究所(NIH)のブランバーグ(Baruch Blumberg)氏が,オーストラリアの先住民の血清の中から,頻回の輸血を受けた患者の血清に反応するタンパク質を発見し,慢性肝炎の原因ウイルスの一部であることを突き止めた。後にB型肝炎と呼ばれる肝炎のウイルスで,ブランバーグ氏

    2020年ノーベル生理学・医学賞:C型肝炎ウイルスの発見で米などの3氏に
  • 南極の氷河期を生き延びたトビムシの謎

    南極大陸の内陸部にある山の斜面の岩の下に,ホソシロトビムシという6脚の小動物が生息している。近年の調査と遺伝子解析から,ホソシロトビムシが命を脅かす氷床や有毒な塩(えん)をなんとか回避しながら,30回を超える氷河期をほぼ同じ場所で生き抜いてきたことが判明した。その間,個体数がわずか2匹に減ったこともあったようだ。 再録:別冊日経サイエンス244「動物の行動と進化 環境が育んだ驚異」 著者Douglas Fox カルフォルニア州を拠点とするサイエンスライター。極地科学や気候,生物学についての記事を書いている。誌には「神経伝達の常識を覆すニューロン表面波伝播説」(2018年9月号)などを執筆。 関連記事 「南極の氷下の闇に生物!」,D. フォックス,日経サイエンス2015年10月号。 原題名Extreme Survivor(SCIENTIFIC AMERICAN April 2020) サ

    南極の氷河期を生き延びたトビムシの謎
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    agrisearch 2020/07/27
    「ホソシロトビムシ」
  • 特集:COVID-19終わらないパンデミック

    新型コロナウイルス感染症の流行開始から半年以上が経過した。世界ではなおも感染拡大が続き,終息の時期は見通せない状況だ。各国で感染者数や死者数には大きな違いがある。こうした差異は,対策の内容と打ち出すタイミングの違い,平時からの公衆衛生体制などを反映している可能性がある。感染症対策に唯一の正解はなく,それぞれの国で試行錯誤が続いているのが現状だ。 日では3月下旬から発生した感染者の増加傾向が一旦収まったが,足元では再び東京都を中心に感染者の報告が増えてきている。これまでの日の状況の推移と対策の内容を振り返ることで,経済活動と感染症対策を両立するうえで今後重要になるポイントが見えてくる。 データで見る各国の戦略  出村政彬 尾身茂 政府対策分科会会長に聞く 動き出した社会で感染拡大をどう防ぐか

    特集:COVID-19終わらないパンデミック
  • 2020年7月号

    2020年5月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm 定価1,466円(10%税込) ご購入はお近くの書店または下記ネット書店をご利用ください。 電子書店リスト 愛読者アンケート 感染症 特集:COVID-19パンデミック 世界中に広がった新型コロナウイルスは,今後数年にわたって人間社会から消えることはないだろう。感染症との闘いは長期化しそうだ。 追跡 新型ウイルスの起源  中国のコウモリ洞窟を探る  J. チウ 治療薬開発 3つの戦略 細胞への侵入阻止,ウイルス増殖を抑制…  M. ウォルドホルツ 医療現場を蝕む心の危機  J. モック 医療従事者が語る パンデミックの最前線  聞き手:J. モック/J. シュワルツ ワクチン迅速開発へ新手法 ウイルスの核酸を合成  C. シュミット パンデミック終息へのシナリオ  L. デンワース 長期戦略の模索 第2波に備える  出村政彬 医

    2020年7月号
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    agrisearch 2020/05/23
    「特集:COVID-19パンデミック」
  • 2019年ノーベル物理学賞:私たちの宇宙観に大転換をもたらした米欧の3氏に

    2019年のノーベル物理学賞は私たちの宇宙観に大きな転換をもたらした宇宙分野の研究者に授与される。現在のビッグバン宇宙論の基礎を1960年代半ばに築いた米プリンストン大学のピーブルス(James Peebles)名誉教授と,太陽以外の恒星の周りを回る太陽系外惑星(系外惑星)を1995年に初めて発見したスイス・ジュネーブ大学のマイヨール(Michel Mayor)名誉教授,ケロー(Didier Queloz)教授(英ケンブリッジ大学教授を兼務)の3氏。賞金900万スウェーデンクローナ(約9800万円)の半分がピーブルス博士に,残り半分がマイヨール,ケロー両博士にそれぞれ贈られる。 時空を総覧する  約138億年前に宇宙,つまり私たちが存在している時空が誕生してから起きた主 な出来事を示すイメージ図。インフレーションによって空間が急膨張したように描かれているが,今から 数十億年前からも宇宙は加

    2019年ノーベル物理学賞:私たちの宇宙観に大転換をもたらした米欧の3氏に
  • 2019年ノーベル生理学・医学賞:細胞の低酸素応答の仕組みの解明で米英の3氏に

    酸素はほとんどすべての動物の生命維持に不可欠だ。2019年のノーベル生理学・医学賞は,細胞が周囲の酸素レベルを感知し,それに応答する仕組みを解明した米ジョンズ・ホプキンズ大学のセメンザ(Gregg L. Semenza)教授,英オックスフォード大学のラトクリフ(Sir Peter J. Ratcliffe)教授,米ハーバード大学のケーリン(William G. Kaelin)教授に贈られる。 身体が低酸素状態になると腎臓がエリスロポエチンというホルモンを分泌して赤血球を増やし,酸素の運搬能力を上げようとする。セメンザ教授はこの反応を制御する分子を探索し,肝細胞を用いた実験で,低酸素状態のときにエリスロポエチン遺伝子を活性化するタンパク質を発見。HIF-1(低酸素誘導因子,hypoxia-inducible factor 1)と名付けた。1995年にHIF-1の遺伝子を同定し,HIF-1αと

    2019年ノーベル生理学・医学賞:細胞の低酸素応答の仕組みの解明で米英の3氏に
  • 2018年ノーベル生理学・医学賞:がんを攻撃をする免疫のブレーキを外す新たな治療法を発見した本庶佑氏らに | 日経サイエンス

    2018年10月2日 2018年ノーベル生理学・医学賞:がんを攻撃をする免疫のブレーキを外す新たな治療法を発見した庶佑氏らに がんの治療は,長らく「手術,放射線照射,化学療法」の3柱と言われてきた。2018年ノーベル生理学・医学賞は,4目の柱である「免疫療法」を打ち立てた,京都大学特別教授の庶佑氏と米テキサス大のアリソン(James P. Allison)教授に贈られる。 庶氏とアリソン氏は,がんを攻撃する体の免疫系にブレーキをかける仕組みをつきとめ,そのブレーキを解除する「免疫チェックポイント阻害剤」を発見した。それまで打つ手立てがなかった進行したメラノーマなどに対する治療の選択肢となり,がん治療の新たな可能性を開いた。 両者の研究はまったく異なる動機から,独立に始まった。先にカギとなる物質を発見したのは庶氏らのグループだ。1992年,石田靖雅氏(現奈良先端科学技術大学院大学

    2018年ノーベル生理学・医学賞:がんを攻撃をする免疫のブレーキを外す新たな治療法を発見した本庶佑氏らに | 日経サイエンス
  • 科学はいかに生まれたか

    この世界の成り立ちを理解したい。人間は太古の昔からそんな欲求を抱いてきた。それは宗教を生み,占星術をもたらし,哲学を育んだ。その中から仮説の構築と観測による検証という科学の方法論が立ち現れた。近代科学への胎動は16世紀半ばから始まり,コペルニクス,ガリレオ,ケプラー,デカルト,ホイヘンス,ライプニッツらによって発展。17世紀にニュートンが構築した力学によって,その基礎が確立した。先人たちが知を積み上げ,影響し合いながら科学の体系を作り上げていった道程は,彼らが著した書物によって今に伝えられている。 そうした歴史的書物の世界有数のコレクションが,日にある。金沢工業大学の「工学の曙文庫」だ。アリストテレスからハイゼンベルクまで,世界の科学をつくってきた2000冊余を収蔵する。この9月,その蔵書が東京で公開される。この機に代表的な書物を改めて繙き,科学がいかに生まれたか,3人の識者に聞いた。

    科学はいかに生まれたか