新約聖書のヨハネによる福音書の第1章は、「はじめに言葉があった」から始まる。私たちの生活の根本となるこの「言葉」。このコミュニケーションツールに支障をきたしている人たちがいる。「言語発達障害」とよばれる疾患に悩む子供たちだ。 この疾患領域を専門とする医師はきわめて少ないのだが、その貴重なスペシャリストとして知られるのが、県立広島病院小児感覚器科主任部長の益田慎医師である。 先天性の疾患で、言葉を覚える幼児の段階から障害が顕在化してくる。言葉を言葉として認識できず、「色」や「におい」として認識することもある。正しい診断とサポートによって社会に出てゆく人がいる一方、正しい診断を受けることができずに、発達障害、知的障害として片づけられるケースも少なくない。
