今も気持ちがざわついている。重苦しさがなかなか消えてくれない。12月12日、東大駒場キャンパスで開かれた姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』についてのブックトーク。2016年に起きた東大生・東大大学院生5人による集団強制わいせつ事件に想を得て書かれたこの小説について、著者を招いて当の東大で議論するというのだから、スリリングな展開になるのは必至だ。そう思って取材に行くと、展開は予想を超えていた。 参加者は東大内外の約250人、立ち見まで出る盛況ぶりだった。始まってまもなく、司会のエッセイスト、小島慶子さんに執筆動機を聞かれた姫野さんが「ちょっといいですか」とパネリスト席から立ち上がって前に出てきた。客席にいた男子学生1人を「来て」と呼び、客席側を向かせて「見て! 緊張しません?」と問う。「すごい緊張しております」。彼が応じると「そうでしょう? 私、だまされて来たんです。東大の教室でおしゃ