街中が鈍い光に濡れている 天は絶えず喉を開き唸り声をとどろかせている 体の中に内在する不協和音と共鳴しているようだ 湿雪を落とす泥のような空から身を縮めて逃げ帰る 手が凍えて靴紐が解きにくい 今日はもう巣から出るまい・・ そう小声で言いながらコートを脱いだ 湯を沸かす薬罐で凍えた手を溶かす かざした手はすぐさまジンジンとして チクチク痒く血が通ってくるのが分かる 呆然として浅薄な考えが浮かんでは消える ふと瓦斯の炎を凝視していたことに気づく 珈琲豆を挽き湯を落とすと忽ち部屋は芳ばしい香りで満たされる ひと口ふた口暖かい・・み口よ口体も溶ける 窓をうつ北風に恐怖する夜 どこからか冷たい空気が侵入している 気をつけなきゃ・・また夜が入ってくる 今日はもう巣から出るまい・・