「岡村さん、好きです」 「両思いだから、くっついてもいいですか?」 「私が笑うと、笑うんだ。岡村さんの隣にいたい」 9月22日で最終回を迎える『初恋、ざらり』(テレビ東京系)を観ていると、胸の奥がツーンとなって涙が出てくる。この涙の訳は何なのだろう。 ざくざくろによる同名漫画を原作とした本作は、軽度知的障害と自閉症を抱える有紗(小野花梨)と、“普通”を信条として生きてきた優しい中年男・岡村(風間俊介)の恋愛を描いている。物語のスタンスとして、バリアフリーがどうだとか、ダイバーシティがどうだみたいなことは語らない。「お涙頂戴」の作品でもない。ただ、有紗と岡村をとり巻く日常が、そして2人の切なさと苦しさが、丹念に映像に刻まれている。 コンパニオンとして働きながら「女性」を搾取され続けてきた有紗が「普通になりたい」と願い、障害の事実を伏せて運送会社の面接を受けることから、物語は始まる。仕分け係の