――ベルリンの壁が崩壊し、分断が解消されて四半世紀あまり経って、私たちの前には依然として壁があります。米国では、メキシコとの間に壁を築こうと訴えるトランプ氏が大統領になりました。この世界をどうとらえたらいいのでしょうか。 「人類が遊牧生活から定住生活に移行し、領地を囲うようになって以降、自らの土地を確保し、社会を築いていく過程の一端を、壁が担うようになりました。米国の有名な詩人ロバート・フロストに『壁を直す』という詩がありますが、彼はここに『良き塀は良き隣人をつくる』との一文を残しています。彼が育った米ニューイングランド地方で、農園には石造りの塀がある。農民たちは、家畜が隣家に行かないように、境界の塀を修理する。『壁』は人間社会に不可欠な要素なのです」 「ただ、国家が国境を管理する手段として、壁は古すぎます。金ばかりかかって非効率的で、役立たずの中世の遺物。『万里の長城』のような観光資源に