ジョー・ブラックをよろしく Meet Joe Black Martin Brest / Brad Pitt,Anthony Hopkins,Claire Forlani / 1998 ★★★★ ぎりぎりのところで支持せざるをえないテンポの遅い映画 監督のマーティン・ブレストは『ビバリーヒルズ・コップ』、『ミッドナイト・ラン』、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の人。ブラッド・ピットが主演のラブ・ロマンス。上映時間が181分。というような諸条件から、手を出さなかった人も多いと思うが、これはなかなか注目すべき映画だった。 この映画が181分という長尺になっているのは、入っているエピソードが多いからではなく、ひたすら1つのシーケンスに費やすショットが多く、さらには1つのショットに費やす時間が長いためである。また、普通の映画であれば緩急ということを考えて、序盤はゆっくりとしたペースにするとしても
スペース カウボーイ Space Cowboys Clint Eastwood / Clint Eastwood,Tommy Lee Jones,Donald Sutherland,James Garner,James Cromwell,William Devane,Marcia Gay Harden / 2000 ★★★ 期待しすぎたせいか、ちょっと不満 クリント・イーストウッドの監督・製作・主演作品。旧ソ連製の人工衛星が地球に向かって落下しつつあるので、ロートル4人がスペース・シャトルに乗って修理に向かう。老人版『アルマゲドン』。期待が高すぎたせいで少し拍子抜けした。 かつての仲間を集めるプロセスがやたらにあっさりと進行するところなどは、『アルマゲドン』の陥った罠を回避するイーストウッドの頭の良さをはっきりと示している。そういった配慮はわかるんだけど、本作はやっぱり慣れない大作映画のプ
黒人アスリートはなぜ強いのか? その身体の秘密と苦闘の歴史に迫る Taboo: Why Black Athletes Dominate Sports and Why We're Afraid to Talk About It ジョン・エンタイン / 創元社 / 2003/04/10 ★★★★ 興味深いテーマではある 原題が示すように、黒人が一部のスポーツで強いのには遺伝的な要因があるはずなのだが、そのことがアメリカ社会でタブーとなっているということを論じる本。著者はジャーナリスト。 日本人にとって、スポーツの分野によって「人種」の向き不向きがあるということは常識だろう。普通の日本人にとってのオリンピック競技鑑賞は、日本人選手が、生まれながらの資質という点での圧倒的な不利さを、その不屈の精神力で克服する(あるいは克服できない)のを見て楽しむという行為である。そういうわけだから、100m走の上
魂まで奪われた少女たち 女子体操とフィギュアスケートの真実 Little Girls in Pretty Boxes: The Making and Breaking of Elite Gymnasts and Figure Skaters ジョーン・ライアン / 時事通信社 / 97/12/20 ★★★★ おそらくこれを書いたこと自体が勇気あることなのだろうが 女子体操とフィギュア・スケートの世界で行われている児童虐待を扱ったノンフィクション。著者はスポーツ・コラムニスト。虐待の対象となっている少女たちへの感情移入が激しすぎるようにも思えるけれども、そうせざるをえないほど憤っていることは理解できるし共感できる。 しかしこんなことは当然のことだろう。フィギュア・スケートはそれほどでもないけれども、体操をやっている女子体操選手たちを見ていれば、彼女たちが恐ろしいほどのプレッシャーにさらされて
流血の魔術 最強の演技 すべてのプロセスはショーである ミスター高橋 / 講談社 / 2001/12/10 ★★★★ 楽しい話がいっぱい 元新日本プロレスの名物レフェリー、ミスター高橋の内幕暴露本。引退後に作るはずだった警備会社に関する約束を会社側に反故にされたことへの報復と噂されている。タイトルと副題にあるように、新日本プロレスの試合がすべてショーであることを明らかにしている。「プロレスは八百長である」という世間の常識からすれば当たり前のことだと思うかもしれないが、(1) マッチメイキングに深くかかわった重要人物による暴露であること、(2) それがインサイダーにしか知り得ない細かい記述によって支えられていること、(3) 「すべて」の試合がショーであると述べていることに重要性がある。 最後の点についてもう少し詳しく述べれば、普通のプロレス・ファンは、プロレスの試合はショーであるとは思ってい
だれが「本」を殺すのか 佐野眞一 / プレジデント社 / 01/02/15 ★★ 網羅的だが困った内容 出版業界の現状を取材したルポルタージュ。『プレジデント』誌に「『本』は届いているか」というタイトルで1999年から2000年にかけて連載された文章を全面的に改稿・加筆したものらしい。章別に書店、流通、版元、地方出版、編集者、図書館、書評、電子出版と幅広いトピックを抑えている網羅的な内容である。 いろいろと書いたのだが、あまりに品がない内容になってしまったので、いったん全部削除して要点だけを簡潔に記すことにする。 業界のインサイダーによって書かれた本の限界が露骨に出ている。『激震! 建設業界』の項を参照。「出版業界の証券アナリスト」なるものが存在しないことが、出版業界の不幸である。 前述のように、網羅的にトピックをカバーしているが、個人的に目新しかったのは地方出版と図書館に関する記述だった
倫理21 柄谷行人 / 平凡社 / 00/02/23 ★★★ ちょっと無理があるのでは 帯には「初の書き下ろし評論」とあるが、その実は講演原稿に加筆修正したもの。カントなどをもとに「倫理」と「道徳」を区別し、戦争責任などの具体的な例に「倫理」を適用しようという内容。 しかし私には、著者の思考は逆の道筋をたどったとしか思えないのである。つまり、まず最初に「批判したい対象」や「支持したい対象」があり、これに「共同体の道徳」以外の理由を見いだそうとして、「倫理」というキーワードを発見し、それを支持するような言葉をあちこちから探し集めたという経緯(まあこの手の評論は珍しくもないが、とりわけ有名なのは蓮實重彦で、あの人の場合は、大衆娯楽として見られていた西部劇や家族ドラマなどが好きな自分に困惑し、それを正当化するための屁理屈をいろいろと考えついたのだと思われる。その屁理屈を本気にしてしまった人はかな
ドキュメント戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争 高木徹 / 講談社 / 2002/06/30 ★★★ 内容は興味深い 著者はNHKのディレクター。NHKスペシャル『民族浄化』(未見)で話題を呼んだ内容を本にしたということらしい。ボスニア紛争において、アメリカのPR会社が果たした役割がどんなものだったかを描いている。 バリー・レヴィンソンの『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』は、ダスティン・ホフマン演じるハリウッドの映画プロデューサーが、大統領を窮地から救うために情報操作を行うという話だった。こういうタイプの陰謀史観は古くからある形式であると言える。また、他国がアメリカにおける地位を改善しようとして行う活動は、「ロビイング」と呼ばれるごく当たり前の活動である。本書で取り上げられているケースの特異性は、アメリカとはほとんど関係のない異国の地での内戦(という言葉は不適切かもしれないが)を有利に
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く