〈道徳〉教材としての杉原ビザ 小学校や中学校の「道徳の時間」において杉原千畝が取り上げられる場合、教員はまず約600万人に及ぶ犠牲者数や写真資料を示して「ホロコースト」について説明したうえで、杉原が約1か月にわたって二千通以上のビザを発給することで、約六千人のユダヤ人の逃亡を助けてその命を救ったことを示すのが通例である(たとえば、www.page.sannet.ne.jp/tate-y/sugi1sensai.htm)。 領事代理杉原千畝は、外務大臣の訓令に違反し個人としての決断によりビザを発給したことで、外交官としての地位を危うくするだけでなく自らの安全をも危険にさらした。したがって杉原の行為は自己犠牲的な〈道徳〉的行為としてとらえることができるのであり、たとえば「自分であればそのようにするか」と児童生徒に問いかけることが可能となる。こうして杉原千畝の物語は〈道徳〉教材として成立するので