はじめに 2019年12月4日、満を持してテッド・チャンの第二短編集『息吹』が発売された。今回は「物語が語られるということ」を焦点に、周辺の作品や情報を追いながら表題作の短編「息吹」を読み解いていきたい。 「息吹」の基本情報 息吹 作者:テッド・チャン早川書房Amazon テッド・チャンによる短編小説。原題は「Exhalation」で、そのまんまの意味だと「発散・蒸発」あるいは呼気(息をはき出すこと)といった感じ。 すべてのものが超高圧の貯蔵槽(reservoir)との気圧差を利用した空気圧駆動で動いていて、チタン製外殻の歯車で動く人々が生活しているというスチーム・パンクめいた世界が舞台。 2008年に出たアンソロジー「Eclipse 2: New Science Fiction and Fantasy」が初出。邦訳の初出はSFマガジン2010年1月号で、その後『SFマガジン700 創刊7
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