永井陽之助氏が亡くなった。氏が文藝春秋読者賞を受賞した連載を単行本化した「現代と戦略」が出たのは、四半世紀も前のことになる。残念ながら現在は絶版になっているようだが、その本の中で、第二次世界大戦と軍事ケインズ主義を取り上げた文章は、昨今の話題(ニューディールではなく第二次世界大戦が大恐慌を終わらせた云々)に関係すると思われるので、以下に引用してみる*1。 第二次大戦は、ベトナム戦争と雲泥の差で米国民の圧倒的な支持をうけ、国債は羽がはえたようにさばけ、増税への反対はなく、したがって、インフレもなかった。数百億ドルの資金が戦争機構に投入されたが、国民の消費生活になんらの変化もなかった。むしろ逆に、1939年から45年にかけて個人一人あたりの実質消費は11パーセントも上昇した(『歴史統計』225ページ)*2。30年代よりも、40年代のほうが、より多くの大砲と、より多くのバターを同時に増産すること