ここんとこ金融の世界で、大いに見直されているというか、初めて注目を集めているのが、ハイマン・ミンスキーという既に故人となった経済学者である。通常、景気のサイクルというのは、需要と供給のバランスによって説明され、在庫調整を中心に景気循環サイクルが描かれるのだが、彼は経済主体の所得と債務の関係から見た景気サイクルを重視した。また、金融不安定性仮説という彼の理論の名称が示す通り、市場は投機と恐慌の双方に陥りやすいという基本的ビューを持っており、市場は効率的なものである、という前提を持つ新古典派とはかなり異なる立場である。シカゴ学派全盛であった昨今の米国で、彼がずっと注目を集めなかったのは、このせいであろう。 彼の理論によれば、全ての経済主体は3つに分類される。1つは「ヘッジ金融ユニット」であり、これはキャッシュフロー(=所得)で利払と債務の償還を賄える法人とか個人の経済ユニットである。2つめは「