ベトナム戦争を泥沼化させた「戦争犯罪人」で傲慢な「人間計算機」……元国防長官はしかし、そんな評価には収まりきらない複雑な人間だった 7年ほど前、ベトナム戦争当時の米国防長官ロバート・マクナマラの伝記を書こうと考えたことがある。ベトナムで犯した過ちを自ら検証しようとしてきた彼の意気に興味をそそられたからだ。 頭脳明晰で本来は立派な人間である彼が、戦争犯罪人のように非難されることになった悲劇にも心引かれた。良心との葛藤を続けてきた彼が、自らの行為をどう釈明するのか知りたいと思った。 私はマクナマラに電話をかけた。彼とは面識があったし、マクナマラも私が書いたロバート・ケネディの伝記について話しかけてきたことがあったのだ。 ワシントンのオフィスで、マクナマラは私を歓待してくれた。米政権に集まった精鋭が愚かな戦争にのめり込んでいく経緯を描いたデービッド・ハルバースタムの著書『ベスト&ブライテスト』に