今も身の回りで行われるさまざまな「世襲」を、私たちは当たり前に受け入れています。一方で、自由と平等をタテマエとする現代社会で、地位や権力の世襲がやっかみの元になるのも事実。古くさくも、不公平な慣習にもみえます。 そこで、現代の世襲が社会の中でどのように機能し、なぜ時には肯定的な態度で受け入れられるのか? 明治学院大学社会学部教授の石原俊先生に世襲のメカニズムを聞きました。 前近代の世襲と現代の世襲 -歴史的には、なぜ世襲が行われてきたのでしょうか? 前近代は、厳しい身分制度によって、地位や権力が子孫に受け継がれてきました。日本でも前近代の武士(士分)や貴族(公家)、近代に入っても戦前の華族や現在の皇族は、身分を世襲するのが当たり前です。 一部の例外を除けば、世襲のシステムに疑問をいだく人は、ほとんどいなかったと考えられます。身分制度を当たり前に受け入れていましたし、権力と結びついた宗教の力