今月最強クラスの憂鬱の馬鹿野郎がヒュプノス様に飛び蹴りを喰らわせてどこかにすっ飛ばしたらしく僕は眠れないまま朝を迎えた。明け方の暗闇を斜めに切る雷雨。雷鳴と稲光の競演。雨音を背景にカーテンで織り成される光と影のショーを僕は万年床の上に体育座りでブリーフを震わせながら眺めていた。我が家には雨戸を閉めたり鍵をかけたりといった習慣がないのでお天気ショーはひょっとしたら隣人よりも近い距離にいる。虫や雀が飛び込んでくるのもしばしばで、さすがに今はもう喜んだりすることはなくなったけれど子供のころは闖入者のたびに弟と二人で大喜びしたものだ。カブトムシは僕ら兄弟にとってクロマティ級のスーパースターだった。「兄ちゃんカブトムシだー」「ぷうぷぷそれコクワガタだよバーカ」 小学生のとき僕ら兄弟はドラえもんが大好きで、父親に頼みこみ、部屋に二つ並んだ押し入れの上段に布団を運びこんで寝ていた。ある晩、弟が僕の頭上に