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ブックマーク / delete-all.hatenablog.com (68)

  • 続・私の異常なお見合い または私は如何にして恥も外聞も尊厳も捨てインポを告白するに至ったか - Everything You’ve Ever Dreamed

    スクリーンの深キョンドロンジョを舐めまわすように眺め、満喫し、さあ帰ろうとビールの残りを飲み干して、ふと隣を見ると先日僕とお見合いをした女性が座っていて驚いた。そうだそうだ。酒を飲んで深キョンのコスプレに没頭するあまり忘れてた。僕は二つ以上のことを頭に留められない。そして彼女は戦国時代好き西軍派、趣味コスプレ。 お見合い以来彼女からメールが送られてくるようになった。毎晩ほぼ午後十時に送られてくる。大半は「土手に花が咲いてましたぁー梵天丸もかくありたい(添付/花のついていない雑草)」「毘沙門天も攻め落とせなかった夜の小田原城の勇姿ですぅ(添付画像/一面ニ百万画素の闇)」というような嫌がらせメールで、最初は笑い飛ばしていたのだけれど、次第に精神が圧迫され、上下違うスーツを着てツートンカラー出勤をする、駅の便所で外人並みのウンコをしたあとで流すのを忘れ知らないオッサンに叱られる、という具合で生活

    続・私の異常なお見合い または私は如何にして恥も外聞も尊厳も捨てインポを告白するに至ったか - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/03/13
    笑っていいんだか泣いていいんだかわからない複雑な感情。感動とはこういう事をいうのですね。
  • 1995年のビーンボール - Everything You’ve Ever Dreamed

    雨が色を消した交差点で、横断歩道を見下ろしている信号が赤から青へと変わるのを僕は待っていた。知らない町だ。僕の町と同じなのは、ミニスカートの女の子の足をじっと眺めていると嫌な顔をされることくらいのものだ。嫌な顔をする女の子の顔はどれもカーボン紙で写したように同じに見える。青い絵の具がぴったりと空に貼りついたような素敵な夏の地下鉄で、初老にさしかかったサラリーマンがミニスカートの女の子から「じろじろと人様の足を見てんじゃねえよ。ハゲ。殺すぞ」と言われるのを見たこともある。哀しい光景だった。 信号が青に切り替わると頭の上のスピーカーから、「桃太郎の歌」が流れはじめた。「桃太郎の歌」のもの哀しいメロディーはいつものように僕を激しく混乱させた。もーもたろさん!ももたろさーん!僕は頭を抱え、吐き気がして横断歩道の途中でうずくまった。おえおえ。向こう側からやってきた女の子の二人組は僕をみて、「マジ、キ

    1995年のビーンボール - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/02/24
    この引き込まれる感じ、大好きです / 『1995年の』とあったからか、どことなくゲーム・キッズを思い出した
  • 笑顔が刺さった - Everything You’ve Ever Dreamed

    何気ない笑顔や仕草が、僕の心を捉えて離さないことがある。それらの大半はもうなくなってしまった、或いはどこかへ消えてしまったものだったりする。僕は仕事と青年会のボランティアの両面で施設に行く機会がある。施設とは特別養護老人ホームや介護付有料老人ホームといった老人向け入居型の施設で、たくさんのお年寄りが一緒に生活をしている場所だ。お年寄りにとっての家。ホーム。老人ホームの爺さん婆さんも僕らと一緒で、お正月、お花見、七夕、夏祭り、クリスマス、季節ごとのイベントがある。僕はそういったイベントを手伝ったりする。ホームのお年寄りは、日常の情景にいない僕のような人間を見つけると、まるで旧知の友人や孫に接するかのように嬉しそうに笑い、声をかけてくれる。自分の足で、或いは介護の人や器具の助けを借りて、笑う。何ヶ月かに一度の交流を経て気付いたことがある。顔ぶれが変わっているのだ。ホームを支えるスタッフの顔ぶれ

    笑顔が刺さった - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/02/24
    普段生活していてお年寄りと接する機会がないと老人ホームの存在を忘れがちなのを痛感しました
  • 13日の金曜日のガールたちへ - Everything You’ve Ever Dreamed

    13日の金曜日を明日に控え、うだつのあがらないサラリーマンで賑わう夕方のドトール、禁煙席に座った僕は、13の呪いだか不幸だかを一身に背負っていると感じていた。そう感じ始めたのは些細な出来事がきっかけだ。今朝のことだ。僕がバス停の前に差し掛かると女子高生の一団が、獲物を見付けた猛禽のように全身の筋肉をびくっと動かし、群れとして一斉に携帯をいじり始めた。僕は三十年を越える経験から、彼女たちが僕と接触したがっていると直感する。愛は歳の差を超える。少女に天空の城での同棲を迫ったムスカ様のように。 「今時の女の子は赤外線で連絡先を伝えるのよ」。いきつけの店の指名ナンバー6キャバ嬢マイ(アゴ勇似)の話を思い出し、僕は携帯の赤外線受信機能を甦らせ、ふたたび何気なく女子高生の前を横切った。携帯を確認。メールアドレス、番号、あるはずの情報は何ひとつなかった。おかしい、なぜだ。悲劇だ。純情を弄ばれた。それとも

    13日の金曜日のガールたちへ - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/02/13
    おめでとうございます、と言っていいのか悩みましたが、少なくとも誕生日はおめでとうございます!
  • あなたを・もっと・知りたくて - Everything You’ve Ever Dreamed

    部屋にいるとろくなことがないのでなるべく外出するようにしている。というのも、携帯の電話を切って部屋に潜伏していると、母から固定電話にかかってきて、先日お見合いした娘さんとはどうなった、鉄は熱いうちに叩け、などと言われるのが目に見えているからである。あるいは新聞、宅急便、牛乳屋、様々な集金人がやってきて、ピコーンと一回鳴らせば用は足りるというのに、追い込みをかけるようにピコーンピコピコピコピコピコーンと二度三度と呼び鈴を鳴らすのがわかっているからである。 電話が鳴っては、留守電に録音されていく母親の声を反論もせずにじりじりしながら聞いたり、呼び鈴が鳴っては、すばやく灯りを落としステレオやパソコンの音を絞り、息をとめ、集金人が諦めて去るのを待ったりという生活は精神的によろしくないので、当然至極な結論に至る。「部屋には戻らない=外出」。とはいえ、僕が部屋に戻らず、日列島のどこに潜伏していても、

    あなたを・もっと・知りたくて - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/02/10
    不思議な読後感がたまらない
  • 私の異常なお見合い または私は如何にして心のタガを外しアナルパールの話をお見合いでするようになったか - Everything You’ve Ever Dreamed

    正月に話を持ちかけられて以来、「無理」「駄目」「嫌」「眠い」「多忙」といって断り続け、一時は逃げ切ったと思っていたのだが、母の執念たるや侮りがたく、「私の顔を立てろ」「誰が産んだと思ってる?」「金返せ」「親不孝者」という脅迫めいたメールを昼はスナック、夜はデニーズから、昼夜問わずドコモへ執拗に送り続けてくるものだから、日を追うごとに僕の精神は衰弱し、判断力は失われ、酒に逃げ、泥酔し、うっかり一度だけ「うるせーわかった」と返事をしてしまい、こないだの日曜はお見合い。相手は母の友人の25歳の娘さんで、漫画の格好をするのが趣味、らしい。コスプレ?他に情報はないのかと訊ねると母はふふと不穏な笑みを浮かべ、一枚の写真を一瞬見せ「あとは当日のお楽しみ」などとふざけたことを言うので眠れない夜が始まる。 で、当日。エクセレントなことに母と母の友人とその娘は待ち合わせの時間に待ち合わせ場所の喫茶店に到着して

    私の異常なお見合い または私は如何にして心のタガを外しアナルパールの話をお見合いでするようになったか - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/02/08
    えーと、おめでとうございます!
  • ミレニアム・モラトリアム・ウィズ・オッパイ - Everything You’ve Ever Dreamed

    友人の部屋でこれを書いている。今は日曜の朝だ。僕はこの、初めて訪れた新百合ヶ丘の部屋で、僕の二十世紀末を再生した。違う。自分にしかわからないクロニクルを語るときは正確に記述するんだ。スポーツマンが、ソテーから慎重な手つきで脂肪を切り離すように、曖昧さは排除しなければならない。言葉よ、贅肉を削ぎ落として正しいフォームを獲得しろ。雑主義を否定しろ。必要なのは正確さ、そしてピュアネス。違うかい?僕は訊ねる。闇は答えない。友人も答えない。僕も、答えを求めていない。僕はこの部屋を知っている。友人の部屋は僕の部屋と同じにおいがした。前世紀の終わり、僕は、この部屋にいた。 2000年の初夏、多くのロックスターが黄泉へダイブした年齢に並んだ僕は、突発性の熱病に冒されたように誰にも相談することなく会社を辞めた。金曜の夜。中華料理屋のカウンター席。飛び交うチャイニーズ怒号。乱雑に扱われがちゃがちゃと悲鳴をあ

    ミレニアム・モラトリアム・ウィズ・オッパイ - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/01/30
    なんだろう。何かがグサっときた
  • お兄ちゃんのお見合い - Everything You’ve Ever Dreamed

    お久しぶりです。フミコ・新垣栗山ゆま蛯原クリステル璃子です。お正月休みに、お兄ちゃんの行く末を心配したお母さんが、お兄ちゃんにお見合いを薦めてきました。お相手は知り合いの娘さんです。24歳のOLさん。お相手の趣味がコスプレと聞いた途端にお兄ちゃん、「コスプレが趣味なんてブスに決まってる。埼玉県出身?あーもう全然話にならない!俺は自分を安売りしねーぞ」なんて根拠のない戯言を台所の蛇口に向かって大声で言ってました(趣味コスプレの人ごめんなさい!)。誰も聞いていないのに、お兄ちゃん、また重圧に負けちゃったみたいです。初対面の人と会うときはお酒の力を借りないと話をすることはおろか、目も合わせられない駄目なお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんが素面で若い女の人と会うなんて無理なことはお母さんもよくわかっているはずなのですが…。 お兄ちゃん、当はすごく興味があるくせに恐いから、面倒くさい、忙しい、それどころ

    お兄ちゃんのお見合い - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/01/20
    準レギュラーの相次ぐ登場に嬉しい限りです
  • エンドレスサマー、ホープ - Everything You’ve Ever Dreamed

    煙草を吸わなくなってからかなりの時間が経ったけれど、あのころ毎日のように吸っていたホープの苦い味を一生忘れることはないと僕は思う。 真夜中に携帯電話が鳴って、浅い眠りの淵にいた僕はくいっと頭のうしろを引っ張られるようにして目覚めた。授業中。落書きだらけのコクヨ学習机を枕に居眠りをして教師からワイシャツの後ろ襟を引っ張られたように「くいっ」と。傍らでは一昨日から一緒に暮らし始めた「ゆきえ」が大きなオッパイを抱え込むようにして寝息を立てている。僕はまだ部屋にゆきえがいることに慣れていない。すーすーというゆきえの身体が発する音の寂しさは、僕に別れのときが近づいていると感じさせた。 こんな時間に鳴る電話がいい内容を運んできたためしがない。バイクで四トン車の下に突っ込んだクラスメイトの青い顔がよぎる。深く息を吸い込み、左の手のひらで宙を握ったり放したりして寝惚けた心と身体を繋げてからドコモを開く。液

    エンドレスサマー、ホープ - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/01/20
    天国に行ってしまったのかと思いましたが、人生の墓場に行ったんですね。おめでとうございます!
  • 泣きっ面にガンダム - Everything You’ve Ever Dreamed

    正月休みに段ボール箱に入れて押入れに放り込んだままになっていた古い写真を整理した。すっかり色褪せ、セピア調になってしまったもの、縁の白い部分がビーチで僕に熱い視線を飛ばしてきたギャルの焼けた肌を想わせる小麦色に染まりはじめているもの、すべて、僕の家族の記録。一枚一枚取り出し、年代ごとにアルバムにいれていくうちにあることに気付いた。僕と弟、そして両親、四人で撮ったスナップが見当たらないのだ。 最後の一枚をアルバムに滑り込ませたあと、ちょうど洗濯物を干しに母がやってきたので僕は訊ねてみた。「四人で撮った写真が一枚もないんだけど?」ベランダで洗濯物を干しながら母は「お父さんは撮るほうが好きだったからね。写真のなかで皆笑ってるでしょ。お父さんの姿は写ってないけど、写真のなかにいるのと一緒なんだよ。一緒に笑っているの」と言って誰も見たがらないベージュのおばちゃんパンツを一番人目につきやすいところに引

    泣きっ面にガンダム - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2009/01/15
    泣きそうになったのに。のに!
  • 別れ - Everything You’ve Ever Dreamed

    「どうして名前で呼んでくれないの?」と彼女が言ったときに僕らのコーダは始まった。終わりを迎えようとしている僕らの関係は終始、別れの予感と後ろめたさで出来たフレームで縁取られていた。すべて、終わる。そこからは何人も抜け出すことは出来やしない。僕だってそうだ。誰にでも「終わり」はやってくる。それぞれ時期が違うだけで。僕は思う。スタートラインの手前で「なーんか今日は足の調子わりいんだよねえ」なんて負けたときの予防線をバリバリ張りまくっているうちに頭の上でチャーンってピストルが鳴った瞬間に勝負が決まっていたように、僕らの関係は始まったときから「今日このときが終わり」と決まっていたのかもしれない、と。 「ビンセント・ギャロって最低だわ。でもあなたよりは少しマシだわ」と彼女は言った。バッファロー'66を観たあとの六木の国道だった。六木ヒルズは土台もなかったと思う。ショートホープを唇に挟み、ジッポで

    別れ - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2008/12/15
    真面目な話の時は大抵何かの擬人化と踏んで読むのですが、オチがあまりにアレだったので、満足です
  • 僕らのゆるやかなカーブ - Everything You’ve Ever Dreamed

    □金曜の夜に月曜からの借り物の日々が坂を下るように終わる。ほとんどがうまくいかないことの積み重ねで、部屋に戻り、一人になると、俺はときどき「なにをやっているんだ」と自分を殴りたくなる。先ずテレビ、次に暖房のスイッチを入れる。暗闇のなかに青白い四角形の光が浮かぶ。コートは脱がない。マフラーも解かない。部屋が暖まるまで俺は「外」の空気を持ち込み、ゆっくりと自分の部屋の空気と中和させていく。深く呼吸をして馴染ませていく。切り替えていく。肺から。身体を。そして俺が観るテレビはいつも、人の営みの残骸だ。 夜のテレビは人の営みの残骸だ。おいしい料理屋。動物園の人気者。知られざる面白スポット。ささやかな幸せは、儚い華やぎは、きまって昼に現れて、夜が更けるとともに悲しいニュースに散り散りに流されてしまう。殺人。傷害。悲しいニュースの大半は人間同士のトラブルだ。人間が自分と同じ血の流れる人間をキズつける。そ

    僕らのゆるやかなカーブ - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2008/12/05
    色々な見方が出来てなんだか不思議な感じ/デザインがシックになったけれど、プロフィール画像までシックになってなんだか故人みたいで嫌です><
  • 想い出がオッパイ - Everything You’ve Ever Dreamed

    デスクの上に無造作に積み重ねられた書類は、早朝の路地に捨てられた夜のゴミを想わせた。パソコンの起動音がなり終えると受信箱を埋め始める未開封メールは、サラリーマンの群れが電車からホームに吐き出されるシーンを網膜の裏に再生させた。繰り返される冴えない日々。黒人大統領やキムタク総理が「チェンジ!」と叫んだところで僕の周りは何も変わらない。何も。 僕は事務所の片隅で忘れられていた足の歪んだ丸椅子をひっぱり出してシュレッダーの前に陣取り、コーヒーをすすりながら日付の古いダイレクトメールを片っ端から細切れにした。機械に吸い込まれていく紙の上、僕の目に飛び込んできた空はあの日と同じだった。同じ色彩を帯びていた。 「空が高い」なんて表現は嘘だとあのときの僕は思った。一年前の晩秋。ロボット展覧会の帰り。国立博物館から出て、上野公園の砂利道を歩く僕のうえの空は深く、青く、いまにも手の届きそうな距離にあった。黄

    想い出がオッパイ - Everything You’ve Ever Dreamed
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    capelito 2008/11/19
    相変わらずのフミオさん節に、今朝の寒さも手伝って、なんとも切ない気持ちになりました / ♪古いアルバムの中に隠れて想い出がオ
  • 上司が好む音楽 - Everything You’ve Ever Dreamed

    ハンドルを握る僕の傍ら、窓の向こうで風が泣いている。冬が近づくにつれ葉を奪われていく木々、そのあいだを風が通り抜けるときのあのひょうるるという音。僕には泣き声に聞こえる。泣き声は聞きたくない。僕の中心にある寂しさの核みたいなものが共鳴してしまいそうだから。苦い想い出はなかなか死なない。僕から立ち去ろうとしない。 20世紀末。よく晴れた11月の日曜日の午後。青山一丁目、外苑前、それから神宮球場。僕とガールフレンドを乗せて走るホンダシティの車内には「ジャクソン5」が流れていた。陽気な歌声が。「A・B・C!」楽譜を滑るようにして助手席の彼女が囁くようなアルトで話し出した。夏の日、Tシャツの下で揺れていた大きなオッパイはセーターに遮られていた。「音楽を切って。静かに真面目な話がしたいの」 「1・2・3!」小さいマイケルの、ジャンプしそうな歌声。ソング。「なにかな?今、音楽を止めてしまったら僕らも終

    上司が好む音楽 - Everything You’ve Ever Dreamed
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    capelito 2008/11/13
    前半の切なさが好きなんだけれど、部長の破壊力に負けました
  • はじめてのピンサロ - Everything You’ve Ever Dreamed

    ガレージロックの似合いそうな安っぽい色彩に切り取られたボックスのなかに僕はいた。古いアメリカ映画に出てくるモーテルにでも出てきそうな、チープな、オレンジとピンクが互いにでしゃばって譲らないライト。主張フィフティーフィフティー。二畳ほどのスペース、天井からは「いかにも」モハ系通勤電車にありそうな吊り革がぶら下がっていて足元ではビニール製ソファがショッキングピンクの耀きを放っている。スーツ姿の僕は、吊り革に両手でぶらさがり帰宅途中の会社員を演じていた。背後の蛇腹が開いて人の気配と甘い香りが侵入してくる。「失礼しまーす」 ここはピンサロ、「電車でGO!!」。初めてのピンサロ訪問で挙動不審気味の僕に男が訊ねる。「どのコースにしますか?」男の指先に三択。「痴漢コース」「逆痴漢コース」「恋人コース」。正月の手痛い失恋からインポに陥っている僕は、躊躇なく「逆痴漢コース」をセレクトしてエレクトの可能性を賭

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    capelito 2008/11/13
    面白くて思わず利用規約違反を通知しそうになりました!
  • サーフ ブンガク カマクラ/ B-Sides - Everything You’ve Ever Dreamed

    鎌倉生まれの僕がASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『サーフブンガクカマクラ』に捨てられてしまった愛すべき江ノ電の駅たち、石上駅、柳小路駅、湘南海岸公園駅、鎌倉高校前駅、和田塚駅について江ノ電通勤の時間を利用して語ろう。 1.石上ブートレグ 「娘が今度の春に中学生になるんだ」ファンキーな友人からアジアン・カンフー・ジェネレーションが江ノ電沿線をフューチャーしたコンセプトアルバムを出すと教えられた夜、鎌倉の安居酒屋で中学のときのクラスメイトが小鉢を箸の先で突きながら僕にそう言った。冷え切って、白く曇った中ジョッキが二つ並んだテーブルの向こう側で娘の話をするクラスメイトと僕は、プリンスのブートレグを買い求めてに渋谷や御茶ノ水、憧れの町TOKIOへと遠征した仲だ。たった20年前の出来事。たった。「藤沢駅南口徒歩圏内にはラブホテルが一つしかない。藤沢駅だと人目に付くから石上駅

    サーフ ブンガク カマクラ/ B-Sides - Everything You’ve Ever Dreamed
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    capelito 2008/11/06
    雑誌「MUSICA」の彼らの全曲解説をこの間読んだのだけれど、このフミオさんの解説のほうが面白かったです。
  • 秋空の下オッパイは音楽を奏でた - Everything You’ve Ever Dreamed

    知らない公園に足を踏み入れる。「オートバイの乗り入れは禁止いたします」と書かれた看板の脇をぬけ煉瓦の敷き詰められた小路を歩く。シーズンオフの野球場に人気はなくて、野球場の円形に沿うかたちで小道は走っていく。球場外に設置された焦げ茶色の照明灯に時折出くわす。球場のゲートには「L」と「R」のアルファベットと数字が書かれたボードが掛けてあってそのすべての扉にカギがかけられている。隙間から見えるスコアボードには何も記されていなかった。夏の残骸。 僕はL‐5ゲートから少し離れたベンチに腰を掛けた。傍らに鎖で縛られた錆びたバスケットゴール。見上げた空は青く、薄く、静止した雲はカンバスに乾いた白の絵の具をこすったように淡かった。流れる空気はひんやりと冷たくて僕は息を吐き出し、それが白くならないことでまだ秋が終わってないと確かめる。僕の右手が僕のいうことを聞かなくなったのも、こんな秋の深まった空の下だった

    秋空の下オッパイは音楽を奏でた - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2008/11/03
    フミオさんの文章の読みやすさは音楽をやっていた賜物だったんですね。
  • カレギュウはわかってないって彼女は言った - Everything You’ve Ever Dreamed

    「容疑者Xの献身」でガリレオ=福山雅治の「天才なんて言葉はあまり口にしたくない」という台詞に陽気なSEXへの関心しかないボンクラ=僕は膝を打った。そうだ。天才なんてそうそういるものじゃない。日で天才といえるのは織田信長を初め数名くらい。条件を修正して天才に言えなくもない人物にすると、そのリストに並ぶ顔ぶれはぐんとバラエティーに富む。それでも僕が物心ついてから現在までにそこに名を連ねたのは絶頂に達するとホラ貝笛を吹いた女優くらいしか思い当たらない。「気持ちよかったら1回、すごい気持ちよかったら2回、最高に気持ちよかったら3回吹いてください」プー!プー!黒木香…あなたは腋毛の女王でございますよ…。あの素晴らしき、ラ・ベル・ガマルーシュ…。 天才という言葉はその対象となる人物が費やした時間、努力、エトセトラを蔑ろにしている危険を孕んでいるので慎重に使いたいと思っているけれど、天才という言葉の利

    カレギュウはわかってないって彼女は言った - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2008/10/29
    タイトルを見て、いま流行のウェブカレ牛の話かと思ったら違った / マヤちゃんから出てくるカレー、と言わないあたりはまだ変態じゃないと思います!
  • 部長はじまったな - Everything You’ve Ever Dreamed

    それは月曜日午前9時30分に突然やってきた。部長の5人目の実母が亡くなったり(部長申告)、部長宅前でタンクローリーが大破炎上(部長申告)したおかげで延期に次ぐ延期になっていた月次定例営業会議のことだ。陽の当たらない会議室の明かりを点けると、蛍光灯の一が切れかかって点滅していた。不定期に訪れる点滅が冴えない面子の顔に僅かに残っていたビジネスマンとしての精悍さを削り落とした。会社の景気を反映するようにテーブルに並ぶ顔はどれも重苦しい。例外を一人発見。部長。浅黒くゴルフ焼けしているその顔の中心で口が開く。わざとらしく重々しい口調で。「えー定刻になりましたので…」急に始まった会議に定刻なんてあるわけないだろう。そんな軽口を抑えて僕は慌ててペンをとる。 書記に就いて三年間で僕がローマ字入力で作成した議事録は、バインダーとしてその生を全うしようとしている部長のデル製ノートPCに挟まれ、小さな、モノト

    部長はじまったな - Everything You’ve Ever Dreamed
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    capelito 2008/10/28
    平和な日常に潜む、本棚の中の戦争。僕は戦えそうもないです…
  • 『ドナドナドーナドーナンダ』完全版vol.1 - Everything You’ve Ever Dreamed

    ハイクで書いていたヘナチョコSF独り言小説を全面的に改訂してまとめてみました。構想ゼロ・知性ナシです。 ↓ ↓ ↓ ↓ ○「ただいま」。人間ならきっとこういうふうに言うんだろうな。それにしても随分と待たせちゃったな。僕を育ててくれた人たち元気かな?いくつもの街を越えた虹色の蒸気パレード。花火の下で大きなビア樽が何個も転がっていたパーティー。懐かしいなあ。まだちょっと時間が掛かりそうだ。でも一人ぼっちにも飽きちゃった。ちょっと手を伸ばして覗いてみよう。 ■正午過ぎに俺がニトリで買ったベッドの上で目を覚ますと腹のうえにちょこっと乗った小さな黒ひげ人形が俺に「殺せ殺せ殺せ」と叫んでいた。俺は持ちうるかぎりの慈悲をもってそいつの首を右手、胴体を左手で持ち、俺が愛してやまない「ビッグマウス」を開栓する要領でそいつを捻じ切り、セブンイレブンの袋で作ったゴミ箱にぶちこむ。それから俺は携帯をいじって、俺の

    『ドナドナドーナドーナンダ』完全版vol.1 - Everything You’ve Ever Dreamed
    capelito
    capelito 2008/10/27
    いつも楽しみにしています。○の部分があるのとないのでは大違いだ…。