夏目漱石の「道草」は主人公の、 「世の中に片付くなんてものは殆どありやしない。一遍起つた事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変わるから人にも自分にも解らなくなるだけの事さ」 という印象的なセリフで終わる。 「道草」の前に書かれた「ガラス戸の中」というエッセイにおいて、漱石は「一遍起つた事は何時までも続く」ことについて、より生々しい言葉で語ってゐる。 病に臥せってばかりの自分の健康状態をあらわす言葉として、これまで「どうかこうか生きてゐる」という一句を使ってきたが、ある人から「まあもとの病気の継続なんでしょう」と言われて「継続」という言葉が気に入った。それからは「病気はまだ継続中です」と答えるようになった。 漱石はこの「継続」という言葉から哲学的な思索を展開する。 欧州では戦争が続いてゐる。今こうして人と話したり文章を書いたりしてゐられるのは、天下が太平になったからではない。たまたま塹壕の