「阪神3-4横浜」(30日、甲子園) 冷たさを増した秋風が、見る間に顔中の汗を消し去っていく。阪神の藤川がまさかの逆転被弾。白球が突き刺さった左翼席を、球児はマウンド上からただぼう然と見つめた。 「力がないだけです」 血色を失った体を、守護神の本能が支えていた。試合後の通路。全身の虚脱感を懸命に振り払う守護神の右頬(ほお)から、ぬぐい忘れた涙の滴がこぼれ落ちた。 こみ上げる感情が過剰なアドレナリンとなり、守護神の直球から力を奪った。矢野のテーマ曲とともにマウンドを踏み締めた2点リードの九回。連続四球で無死一、二塁とされると、迎えた4番・村田にカウント2‐1から投じた4球目、高め149キロを完ぺきにとらえられた。打球は虎党の悲鳴とともに左翼席へ。まさかの逆転3ラン被弾。悪夢の凶弾が別れの儀式を奪い、自力優勝の可能性をも奪い去った。 命を預けて戦える唯一無二のパートナーだった。飛躍の