「昼夜を問わず研究開発に没頭できる人材はいないか」。台湾積体電路製造(TSMC)の幹部は2024年8月下旬、日本のある国立大学の大学院教授にこう尋ねたという。 具体像を確認しようとする教授に、TSMC幹部ははっきり答えた。「日本人は想定より働かないが、博士号を取得できる学生なら違うはずだ。積極的に受け入れるルートを広く築きたい」 ■本連載のラインアップ予定 ・TSMC、博士獲得へ全国行脚 「昼夜問わず仕事できる人材」(今回) ・博士の卵も囲い込むアマゾン キリンHDやJR西、争奪戦で挽回に動く ・ポケモン、博士手当100万円 専門性だけでない「ゼロイチ」の力 ・富士通、博士課程進学と同時に雇用 研究しながら働く二刀流人材に ・三井住友信託銀行、異色の理系バンカー部隊発足 博士の目利き力に着目 ・北大博士学生、ゴルフ場の集客を分析 育成へ大学も変わる ・筑波大博士、学生と企業がオンラインサロ
首相がこう発言した背景には、国連が5月28日発表した調査報告書がある。報告書は、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が23年7月から8月にかけて実施した訪日調査の結果である。報告書で旧ジャニーズ事務所(現スマイルアップ)などのエンターテインメント業界と並んで指摘を受けた業界がある。アニメーション業界だ。報告書は、アニメーターの低賃金、過度な長期労働、不公正な請負関係、クリエーターの知的財産権が守られない契約などを指摘し、「搾取されやすい環境がつくり出されている」と結論付けた。 作品排除「常にあるリスク」 日本のアニメ産業は近年、外需をけん引役として成長しており、22年に市場規模は3兆円を超えた。24年6月に日本政府が「新たなクールジャパン戦略」を公表し、アニメをはじめとするコンテンツ産業を基幹産業に位置付けた上で、海外市場規模を33年までに20兆円以上にする目標を掲げている。 今回の
江崎グリコは4月3日に基幹システムの切り替え作業時にトラブルが発生し、物流センターにおける出荷データなどに不具合が生じた。同社製品のほか、江崎グリコが販売を請け負うキリンビバレッジの「トロピカーナ」なども出荷停止を余儀なくされている。障害発生から2カ月以上たってなお、主力商品の出荷を再開できない深刻な事態だ。 ユニ・チャームでも5月上旬に基幹システムを更新した後にトラブルが起こった。大規模な混乱にはならなかったが、公式通販サイトでは6月中旬時点で、紙おむつなどの到着に1週間~10日ほどかかる状況だ。ユニ・チャーム上席執行役員の上田健次ESG本部長はこの遅れについて、「小売店向けの出荷を優先して正常化させたため」と説明する。 3社のトラブルはともに基幹システムの障害を発端としたものだが、今後同様のトラブル事例が増える可能性は高い。日本独特の商習慣など複数の原因が絡み合い、システム刷新を難しく
「みんな悲鳴を上げて消えていった」。ある通信業界の有識者はそう語る。2023年、日本のスマートフォンメーカーが相次いで撤退や事業縮小を表明。国産スマホは絶滅の危機にひんしている。 京セラは個人向けのスマホ事業から撤退。富士通を母体とし、シニア向け「らくらくホン」を手掛けるFCNT(神奈川県大和市)も民事再生法の適用を申請し、中国のレノボ・グループの傘下に入った。21年にスマホに参入したバルミューダも撤退を決め、事業を従来通り継続できたソニーとシャープにも激しい逆風が吹く。 08年の米アップル「iPhone」上陸以来、縮小の一途をたどってきた国産スマホ。国内生産高は携帯電話時代に記録したピークの1割を割った。23年は円安や部材価格の高騰、総務省による端末割引の規制などが追い打ちをかけ、大量撤退という惨劇につながった。 ソニーは苦しい。調査会社のMM総研(東京・港)によれば23年度、ソニーのス
JR三鷹駅から徒歩約12分。すかいらーくホールディングス(HD)本社の目の前に、同社が展開する郊外型カフェ「むさしの森珈琲」の武蔵野西久保店(東京都武蔵野市)がある。ゆったりとくつろげるソファを配置した店内には、こだわりのコーヒーを飲みながら本を読んだり、談笑したりする女性客やシニア客が多い。 この場所には以前、ファミレスの「ジョナサン」があった。だが、近隣にあるジョナサンの店舗とのカニバリ(共食い)が懸念されたことからコロナ禍のさなかの2021年7月に業態転換した。 ファミレスからカフェに変わったことで来店動機も変化。食事をするだけでなく、店にいる時間を楽しむ客が増えた。ジョナサン時代からテラス席を用意していたが、「むさしの森珈琲になって目に見えて利用が増えた」と同社執行役員店舗開発本部マネージングディレクターの梅木郁男氏は話す。 数字でも転換効果がはっきりと出た。厚切りトーストなどを提
この記事の3つのポイント 衝撃的な事態になったドラマ「セクシー田中さん」 原作を読んで思い出したのは日比谷焼き討ち事件 委細を知らない人が暴走する背景を考えてみる なんとも衝撃的なことが起きてしまった。日本テレビのドラマ「セクシー田中さん」の件だ。原作のマンガの作者の芦原妃名子氏と、脚本家の方との葛藤がネットで話題になったと思ったら、芦原氏が亡くなられるという事態になってしまった。 なにが衝撃的って、私はこのことが話題になった時点で、「これはものすごく面白いマンガなのではないか」と直感して、原作のマンガ7巻をまとめて大人買いしたのである。さあこれから読むかというところで、作者の訃報が飛び込んできて、茫然(ぼうぜん)自失である。 (編集部注:以下に『セクシー田中さん』について若干のネタバレがあります) 普段ならば『セクシー田中さん』というタイトルと設定で、「あ、オフィスラブコメか。自分には関
アスキー創業者で米マイクロソフト元副社長の西和彦氏が破産手続きを開始したことが明らかになった。西氏は新しい大学「日本先端工科大学(仮称)」の創設を目指していた。なぜ破産に至ったのか、西氏にその経緯や新大学の創設に対する影響などについて聞いた。 関連記事:「世界に通用する技術者育てる」大学を創設する西和彦氏の思い 第三者破産手続き開始を受けた経緯について、具体的に教えてください。 西和彦博士(情報学)・日本先端工科大学(仮称)設置準備委員会特別顧問(以下、西氏):今から5年ぐらい前、アスペクト(東京・台東、当時は神田駿河台)という総合出版社の社長が訪ねてこられ、「経営が良くないから出資してください」と頼まれたのです。結局、約3億円をアスペクトに出資しました。 3億円を出資したという事実を、当時のアスペクトの取引銀行である三菱UFJ銀行が知って、「(アスペクトに)貸しているお金を返してくれるか
欧州で未曽有のインフレが続いている。10月のユーロ圏の消費者物価指数(CPI、速報値)は前年同月比10.7%上昇。統計で比較可能な1997年以降で過去最高を6カ月連続で更新した。英国のCPIは9月に前年同月比で10.1%上昇し、約40年ぶりの高水準だ。 欧州の生活者の大きな関心事はエネルギー価格だ。どの国でもガス価格が前年に比べ急上昇しており、各国政府が補助金で価格上昇を抑えるもののバラツキがある。ドイツのように財政が豊かな国は2023年から電気やガスの上限価格を導入するが、それが十分にできない国もある。 こうした中、注目されている製品がある。省エネ性能の高いヒートポンプ式の暖房・給湯機だ。 「ヒートポンプ式への引き合いが強く、作り切れない」。うれしい悲鳴を上げるのは、パナソニック傘下で空調事業を手掛ける空質空調社の道浦正治社長だ。「この1年の売り上げは前年の2倍以上になっている」と話す。
企業と自治体のミスマッチがなぜ発生するのか。現在の日本の平均的な姿を正しく把握できていないからではないか。加えて、企業と自治体がビジョンを共有する仕組みが存在しないことも大きな一因だ。
ドイツのショルツ首相は、同国とロシアを結ぶガスパイプライン「ノルドストリーム」のタービンを視察。ロシアの国営天然ガス会社ガスプロムは、このタービンの返却が遅れているためにドイツへのガス供給を減らしていたと主張していた(写真:ロイター/アフロ) 欧州ではウクライナ戦争への関心が薄れ始め、急速に自らの生活への懸念が高まっている。欧州最大の経済大国ドイツで今、国民の関心を最も集めるのはインフレだ。 コンサルティング大手の米マッキンゼー・アンド・カンパニーが6月、1000人以上のドイツ国民を対象に「最も懸念すること」を聞いたところ、48%が「急激なインフレ」と回答。73%は節約のためにすでに消費行動を変えているという。4月には34%が「ウクライナ侵攻」と答えたが、6月にはその割合は24%にとどまった。「新型コロナウイルス」と答えたのは4%程度だ。 実際、インフレが生活に大きなダメージを与えている。
希望退職の嵐が吹き荒れている。 ラオックス……全従業員の約2割にあたる140人程度 ラオックスの子会社のシャディ……50歳以上かつ勤続10年以上の正社員や契約社員、20人程度 東芝機械……全従業員の1割弱の200~300人 オンワードホールディングス……全従業員の約8%にあたる413人が応募。予定数350人の2割増。 NISSHA……250人規模の希望退職者の募集 味の素……50歳以上の約800人の管理職を対象に、約100人の希望退職者を募集 さらに、オンキヨー、ノーリツ、そして、ファミリーマート……などなど、この3カ月内でもこれだけの企業が、希望退職を実施している(あるいは実施予定)。 辞めてもらいたくない人が手を挙げる 中でも衝撃的だったのが、先週報じられたファミリーマートの希望退職だ。2月3日から7日の間に40歳以上の社員を対象に800人の退職者を募集したところ、1111人が応募。そ
1990年代半ばから生産年齢人口が減少に転じていたにもかかわらず、衰退産業から成長産業への労働力シフトや、女性、シニアの就業者増でしのいできた日本。だが限界に近付きつつある。特に深刻なのが飲食・サービス産業だ。 ・少子化といえども大学生数は増えており30年前の1.6倍にもなる ・とりわけ、旧帝大・早慶・GMARCH・関関同立など名門校は定員を増やしている ・少子化で定員増だと質的低下が危惧されるが、それも誤り。30年前は確かに学年人口が今の2倍近かったが、産業界と相性の良い四年制総合大学(短大と女子大を除く)への女性進学率は低かった。つまり、人口は2倍いたが、その半分の男性しか受け入れていない状態だった。現在は人口こそ半分になったが、文系ならば上位校でも女性比率が4割になる。そのことを考えれば質も保たれている ・とすると、ホワイトカラー職務なのに「若年人材の質の低下」を叫ぶ企業は、少子化が
ロシアのウラジミール・プーチン大統領が3月23日、「非友好国が支払う天然ガス代金はルーブルに限る」と発表した。この発表はドイツの経済界をパニックに陥れ、ガスという「ものづくり大国」の血液が人質に取られた実態を浮き彫りにした。 ドイツのエネルギー企業とロシアの国営企業ガスプロムとの間のガス購入契約によると、ドイツ側はガス代金をユーロまたはドルでガスプロムに払うことになっている。これまでドイツなど西欧諸国に供給されるロシア産ガスの代金の60%がユーロで、40%がドルで支払われてきた。 プーチン大統領の発表がドイツを困惑させたのは、ドイツ企業がルーブルをロシアの銀行から調達できないことが理由だ。EUが取り組む経済制裁措置により、ドイツ企業はロシアの大半の銀行との取引を禁じられている。 このため主要7カ国(G7)は3月28日、「ガス代金の支払いをルーブルに限るというロシア政府の決定は契約違反であり
ロシアによるウクライナ侵攻で、国際的な緊張感が高まる中、「権威主義的」な色合いを強める中国に注目が集まっている。そんな母国に対し、中国に住む中国人や日本など国外に住む中国人は、本音ではどう思っているのか。 今回は、日経プレミアシリーズ『いま中国人は中国をこう見る』より、中国人の国外を見る目の変化について抜粋してお届けする。 総面積は約63万平方キロメートル。京都と唐の時代の街並みを再現した広大なエリアで、中国企業と日本企業が共同で開発。約60億元(約1068億円)もの資金が投じられたビッグプロジェクトで、観光客らに人気の観光スポットになると期待されていた。 だが、開業から1週間で営業休止に追い込まれた。原因は、開業直後からネット上に広がった猛批判だった。「これは日本の文化侵略だろう」「かつて侵略された歴史を忘れたのか!」「大連に日本風の街並みを作るなど、中国に対する侮辱だ」……。 中国のS
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