自己負担の増大は何をもたらすか前回は、医療費の自己負担を所得に比例させる、というファイナンスの仕方は、保険の原則とかけ離れすぎており問題がある、という点について説明しました。今回は、こういった自己負担における応能負担(高所得者に強い負担を求めること)の強化が、どのような帰結に結びつくのか、という点から説明していきたいと思います。 この国の厚生労働行政において、「国民皆保険」は犯すべからざる金科玉条であり(皆保険とは何なのかという議論はさておいて)、進展するTPP交渉においても、絶対に日本の医療保険制度の根幹は維持するのだ、というのが日本政府の考え方です。私も日本の医療保険制度は、さまざま議論を要するところはあるにしても、非常に優れた結果を残している制度であり、罷り間違ってもアメリカの医療保険システムの劣化コピー版にはなってはならないと考えています。しかし、自己負担の強化、特に中高所得層を対