『声をかける』(晶文社) 書店で「ナンパ本」の類が大量に並べられているのは、それほど「需要」があることを証明している。手軽に女性と親密になるための方法が書かれたナンパ本はしかし、女性側の気持ちを無視した内容も多い。「このように声をかければ女性はこう思ってくれる」と当然のように解説されると、違和感を抱く読者もいたのではないか。 一方、カウンセラー・作家として活躍している高石宏輔氏のナンパが興味深いのは、常に女性側の心の奥底にまで入り込み、トラウマさえもあぶりだしてしまう点にある。そして、彼が女性の傷と向き合うとき、彼自身の心の闇も思い出さずにはいられない。「ナンパは自傷行為」と主張する高石氏のナンパ論は、「ナンパについていく女性」の寂しさ、愚かさが男性側にもあてはまるのだと気づかせてくれる。新著『声をかける』(晶文社)もまた、これまでにないナンパについての物語だ。 本作は高石氏のナンパ経験を