1895年、フランスのリュミエール兄弟がシネマトグラフ(映画の原型となる技術)を発明し、映画の普及が始まったばかりの頃。兄弟は自ら映画制作を手掛け、完成した作品の上映会を開催していた。そうして公開された映画の1本に、有名な「列車の到着(ラ・シオタ駅への列車の到着)」がある。 長さはたった50秒間で、画面奥から手前に向かって列車が迫ってくるというシンプルな映像だったが「動く写真」というメディアを見たことのなかった観客たちは、驚いて逃げ惑ったという。 ただしこれは誇張された逸話らしく、観客たちは確かに驚いただろうが、パニックまで起きたという記録は無いそうだ。むしろリュミエール兄弟や初期の興行主たちが、この「パニック伝説」を宣伝材料として利用した可能性も指摘されている。 真偽はいずれにせよ、情報を伝達する「メディア(媒体)」についてイノベーションが起きたとき、私たちがその新たなメディアの持つ性質
