“黒米、赤米がこんなにヒマラヤの山間部に普及しているのはどうしてであろうか。実はその後訪れた、さらに高地(平均二〇〇〇メートル以上、一番高い栽培地点は二六〇〇メートルに及んでいる)のブータンでも赤米の普及率は高いことを知った。これらはいずれもジャポニカ型で耐寒性があり、これが山岳地帯で栽培されている理由かと思われる。それでは色つき米はどのようにして由来したのであろうか。 この点に関し、盛永俊太郎博士の稲作史研究会(『稲の日本史』)での次のような発言が注目される。 「東南アジアに分布しているイネの野生種を調べてみると、その二五系統のものは赤粒で、わずかに一系統だけが白粒でした。この事実から現在の栽培種はみんな白粒であるが、それらのイネはもとはやはり赤粒であったと考えております」 「イネの穀粒はもとは赤でありましたのが、栽培されるようになって、自然の悪条件に対してやや不利と思われる白粒突然変異