“さらに、日本の風土に稲作が適応し土着化していった背景には、土壌の問題がある。日本の土は、「酸性黄褐色・褐色森林土」といって、養分はあまりないが、アルミニウム、鉄分を含み、きわめて酸性が強い。これが幸いなことに、イネという植物は酸性に強く、よく育ち、さらにどんなに強い酸性土であっても、水田をつくり、水をはれば酸性の効果を消す反応を起こしてくれる。水をはって、雑草さえとってやれば、まったく肥料を与えなくても栽培できる。 わが国におけるオオムギ、コムギ栽培の歴史も古い。しかし、これらの麦類は酸性に弱く、イネにとって代ることはできなかった。山の畑の土は、火山灰に由来する黒ボクや花崗岩の風化物、砂質の土からできている。これらの土も養分は少なく、沢山の肥料を入れないと収量を上げることができない。しかも、栽培植物のなかには毎年続けて植えると収量がおちる、いわゆる連作を忌むものがあるが、イネは連作ができ