日本中世史は、日本人研究者による「自国史」研究としてだけでなく、海外においても、日本とは異なる文化的・学術的背景のもとで研究が進められ、地域ごとの特色を帯びながら独自の発展を遂げている。 この数十年の間、国や地域を越えた学術交流はより一層広がりをみせているが、各地域における研究視角や背景を踏まえた相互参照・相互批判までには至っていないのが実情である。 本書では、 英語圏・韓国・中国・ドイツ語圏における研究の動向、在外研究による経験・知見、参照軸としての日本における外国史研究、 外国語で書かれた近年の研究成果などを通じて、多元的に存在する地域ごとの「知の体系」を照らし出すことで、「知の循環」の実践のための道筋を示す。 序論 日本中世史研究をめぐる知の交差 黄霄龍・堀川康史 第1部 海外における日本中世史研究の現在 光と闇を越えて―日本中世史の展望 トーマス・コンラン 韓国からみた日本中世史―