かつて日本を代表する〝文豪〟としてお札の中に閉じ込めていた漱石を、私たちはもう日本という埒内だけに留めておくことはできない― 夏目漱石『こころ』は、1914年に連載が開始されて以来、日本近代文学を代表する作品として読まれ続けてきた。また、優れた翻訳によって、国内だけでなく、海外でも読まれ、研究される作品となっている。 国内外の研究者による様々な論攷から、百年を経た過去の作品としてではなく、いま世界で読まれる文学作品としての魅力と読みの可能性を提示する。 序言―世界から漱石を読むということ アンジェラ・ユー 小林幸夫 長尾直茂(上智大学研究機構長) 第一章 『こころ』の仕組み 『こころ』と反復 アンジェラ・ユー 思いつめ男に鈍い男―夏目漱石「こころ」 小林幸夫 「こころ」:ロマン的〈異形性〉のために 関谷由美子 深淵に置かれて―『黄粱一炊図』と先生の手紙 デニス・ワッシュバーン(渡辺哲史/ア