以前、山田洋次監督の映画「小さいおうち」を映画館で見たけれど、この日曜日にテレビで放映したのでまた見た。原作は中島京子、東京の丘の上の赤い屋根の小さいおうち、ごくごく普通の日常生活のなかで起きた「奥様」の恋愛事件を描いたドラマである。でも、物語の時代は昭和初期の20年、いまから振り返れば、日本が破滅的な戦争に刻々と進んでいくさなかである。 しかし、そこで生きた人々に先行きがわかるはずもない、「南京攻略で大戦果」と新聞は大見出し、「奥様」の夫のおもちゃ工場は「中国でおもちゃが売れる」と喜び、戦争は「近衛さん(往時の首相)にまかせておけばそのうち片付くさ」と思っていた。 「奥様」は夫の部下の華奢(きゃしゃ)な青年との恋にうきうきし、日米開戦の真珠湾攻撃のラジオ放送にも気付かず「風とともに去りぬ」の小説を読んでいた。戦況悪化、いよいよ学徒出陣のころだって、店の裏口から入ればヤミでとんかつも食べら
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