2004年アテネ五輪から、そろって金メダルをとり続けてきた2人の物語の結末は非情だった。レスリング女子53キロ級の吉田沙保里(33)は決勝で敗れ、銀メダル。前日に五輪4連覇を達成した58キロ級の伊調馨(かおり、32)に続くことはできなかった。 「最後に銀メダルで終わると思っていなかった。悔しいです」。試合後、吉田はそう言うと、「申し訳ない」「ごめんなさい」を繰り返した。 ロンドン五輪で3連覇を果たした吉田と伊調だったが、表舞台に出るのは、いつも吉田だった。明るい性格と人当たりの良さで、テレビやイベントへの出演依頼は後を絶たなかった。 「陰」に隠れる格好の伊調は、この状況を望んでいた。「レスリング以外の活動に時間をとられてリズムを崩したくない。沙保里さんに負担がいってしまい、申し訳ないと思う」 2人が公式戦で対戦したのは2001年12月の全日本選手権56キロ級の3位決定戦が最後。吉田が勝利し