「皆さんに、働く場所を提供していくことが大事ですね」 工場など6つの生産施設すべてを失った震災から立ち直りつつある、宮城県気仙沼市の水産加工会社「八葉水産」2代目社長、清水敏也さん(53)は、魚市場を視察した天皇陛下から、こうお声をかけられた。震災から3年。津波で傷ついた生まれ故郷の産業と雇用を守ろうとしてきた清水さんにとり、お言葉は大きな励みとなった。 従業員2人が逃げる途中、波にのまれて犠牲となった。無事だった従業員176人も、厳しい経営環境のため全員解雇せざるを得なかった。 「なんとかしたい」。考えた末、ミシン1つでも始められる、港町ならではの帆布を使った製品作りを思いついた。工房は「GANBAARE(ガンバーレ)」と名付け、帆布職人とともに、八葉水産の元従業員が梱包(こんぽう)も行った。 こうした効果から、震災翌年の8月に、念願の水産加工場を元の場所に再建。生産を本格再開し、従業員