坂のある非風景 愛するものたちが愛される幻を呼び寄せる

スヴェトラーナ・スターリンが一九六〇年代にインド経由でアメリカに移住し、回想録を書いたとき、彼女はスターリンをやさしい父親、おもいやりのある指導者として「内側から」描き、多くの大量殺戮は、彼の邪悪な協力者、とくにラヴレンチー・ベリヤによって強要されたものであるとした。ベリヤの息子、セルゴはのちに回想録を書き、父親を、スターリンの命令にしたがっただけで実はひそかに被害をおさえる努力をした心やさしい家庭人として描いた。ゲオルギー・マレンコフの息子、アンドレイもまた、自分の物語をかたるなかで、スターリンの後継者であった父親を、つねに自分の人生を大事にする実直で勤勉なひととして描いた。ハンナ・アレントが正しく指摘したように、こうした人物は、崇高でバイロン的な悪魔的悪の擬人化ではない。彼らの個人的経験と彼らの行為のもつ恐ろしさとのあいだのギャップは、途方もなく大きい。われわれの内面生活からくる経験、

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「だれが見ても嘘とわかる美談を用いるということではなく、むしろ自分を糾弾し客観的に自分自身を指弾することによってより高度に物語は編まれる。」