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一橋大学 中野 聡 研究室からの情報 戦争の記憶をめぐる日本・フィリピン関係の光と影(2)
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一橋大学 中野 聡 研究室からの情報 戦争の記憶をめぐる日本・フィリピン関係の光と影(2)
(1)で述べてきたように、「慰霊の平和」は、日比関係が敵対から友好へ転換してゆく課程で政府間外交... (1)で述べてきたように、「慰霊の平和」は、日比関係が敵対から友好へ転換してゆく課程で政府間外交にはできない非公式の外交資産を築いてきた。しかし、より近年の展開は、日比間の「慰霊の平和」に内在する――記憶の抑圧と忘却という――問題点を明らかにしつつある。 まず、慰霊が、記憶を喚起するのではなく、場合によっては抑圧する営みだということを確認しておこう。たとえば、9/11事件で崩壊したワールド・トレード・センターの犠牲者追悼式では、1周年の追悼式以来、最小限の弔辞に続いて、犠牲者の名前を読み上げるだけの簡素な方法が採用されている[1]。事件後1年間にわたって地元ニューヨーク・タイムズは犠牲者の横顔を紹介する特集記事を組み続けたが、そこでは故人生前の思い出が語られる一方、くわしい死の事情は、ほとんど語られていない[2]。遺族や知人あるいは新聞読者などの哀悼者(mourner)は、故人の死の惨状を