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消された伝統の復権
本山美彦(京都大学名誉教授) 1 「形のあるもの」と「形のないもの」 ものを考える方法には二種類ある... 本山美彦(京都大学名誉教授) 1 「形のあるもの」と「形のないもの」 ものを考える方法には二種類あるとカントは理解している。形のあるものに拘り続けて考え抜く方法と、形には拘らず考え方そのものの道筋を追う方法である(1)。 形のあるものに拘り続けるものとして、カントは物理学を挙げている(Kant, Immanuel[1785]、邦訳、五ページ)(2)。物理学は自然の法則を考える学問である。自然は形があるのでそれを研究する物理学がこの部類に入れられるのも当然であろう。物理学が自然学とも呼ばれてきたのもそのためである。 ところがカントは、倫理学をもこの部類に入れている。倫理とは形がないのではないか?それなのにカントはなぜ倫理を形のあるものとして理解したのであろうか? カントは、形の中に経験を含めている。経験とは現実世界を生きていくさいに出会うことなので、現実世界の産物として形があるものと位置付け
2012/11/05 リンク