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ジーン・ウルフ「ピース」書評 なんと魅惑的な曖昧と不安定|好書好日
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ジーン・ウルフ「ピース」書評 なんと魅惑的な曖昧と不安定|好書好日
ピース [著]ジーン・ウルフ ジーン・ウルフは、まったくもって一筋縄でいかない作家である。日本でも... ピース [著]ジーン・ウルフ ジーン・ウルフは、まったくもって一筋縄でいかない作家である。日本でもマニアックな人気を誇る彼は、あえてジャンル分けをするならSF/ファンタジーの小説家ということになるのだろうが、フィクションに、生半可な理解や納得よりも謎と混乱を求める、全てのすれっからしの読者に、過剰なまでの満足を与えてくれる。『ピース』は、ウルフが1975年に発表した比較的初期の長編小説である。 語り手の「ぼく」は、オールデン・デニス・ウィア、アメリカ中西部の片田舎の町キャシオンズヴィル(ちなみに架空の地名)に独居する老人である。この土地の旧家の最後の末裔(まつえい)であり、裕福な実業家として人生をまっとうし、すでに引退しているらしい彼は、広大な屋敷内をうろつきながら、幼年時代から現在までの自らの過去を、とりとめもなく、むやみと断片的に、だが濃密に回想する。少年の頃に同居していた美人の叔母オ