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『ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密 (ハヤカワ・ミステリ 1880)』(トマス・H.クック)の感想(11レビュー) - ブクログ
トマス・H・クックは、人間の内面に旅する物語が多いせいか、空間よりも時間を縦に穿孔してゆく作品が多... トマス・H・クックは、人間の内面に旅する物語が多いせいか、空間よりも時間を縦に穿孔してゆく作品が多い。それも鋭い鋼のメスでではなく、浸透する雨垂れの一滴一滴で、静かにしっとりと穿ってゆく文体で。 なので本書の内容には驚かされた。クックという、心を描くことでファンを掴んできた作家が、このように歴史や国や時代としっかり結びついた長大なスケールの物語を書いたということに対して。初めての試みに巨匠と言われる作家が取り組みを見せたことに対して。 そう言えば『キャサリン・カーの終わりなき旅』においても、この作家は神秘的ともオカルト的とも取れる新種の作品を書いて我々を驚かせたのではなかったか。今、この巨匠は徐々に自らの可能性を拡大しようと試みているのかもしれない。 本書は、親友である作家が、ボートの上で両手首を切って、穏やかでありながら、しかし決然と、自らの命を絶ったことから始まる。親友の死を止められな
2014/02/06 リンク