小説「記憶のたわむれ」⑥ - Blue あなたとわたしの本

「翌日──京都を離れる日──、俺はもういちどおばちゃんの店に立ち寄ることにした。好きだった蕎麦ぼうろを持ってな。フリーのライターというのはうそで、児童劇団の営業をやっていることなんかもちゃんと話そうと思った。本当にやりたい仕事を、いまも模索していることも──。 よく晴れた、光のきれいな午後だったよ。俺は帰り支度をし、スーツを着、髭も剃って、船岡山のほうに向かった。 おばちゃんの駄菓子屋はなかった」 ──意味が飲みこめず、藤堂さんの顔を見た。 「駄菓子屋が、なかった？」 藤堂さんはあごを引いた。 「だって、昨日の夜はあったんでしょう？」 あったよ、と藤堂さんは平板な声で返した。 「そんな──、一晩で無くなるなんておかしいじゃないですか」、当たり前のことを言って藤堂さんの顔を見つづけた。藤堂さんも動かない目で見つめ返す。視線をつなげたまま、二人のあいだを数十秒が流れた。そして、ああ、と話を理解

[kinoeri]

人生とか、世の中とか、時代とか、どこに何を求めれば、悲しいことは減って行くんでしょうね。

[masarin-m]

話の筋と東堂の設定を考えるとこの後を想像したくなくる。

[soboku-kobe]

おばちゃんのことは藤堂さんの中の幻想であり、現実だったのでしょうね。無条件の愛そのものの・・・。

[happy-ok3]

智さま、なぜ、去年まであったおばちゃんのお菓子屋さんが一晩でなくなったのでしょうね。藤堂さん泣いたのですね。おばちゃんが子どもたちを愛していたことがよく分かりました・・・。切ないです。

[mkonohazuku]

おばちゃん藤堂さんのこと、待っていたのですね。亡くなられてしまっても、心は繋がっていたのでしょうね。

[sufuretan]

こんにちは、智（とも）さん。静かだけれど、藤堂さんの強いかなしみを感じます。おばちゃんの寝間の壁にいっぱい貼ってあった絵が胸に浮かびました。＞膝に力が入らなくなってきて　よくわかります。⑦が楽しみです