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アドルノ『楽興の時』全解説(1) ベートーヴェンの晩年様式 - sekibang 1.0
大芸術家の晩年の作品に見られる成熟は、果実のそれには似ていない。(中略)そこには古典主義の美学が... 大芸術家の晩年の作品に見られる成熟は、果実のそれには似ていない。(中略)そこには古典主義の美学がつねづね芸術作品に要求している調和がすべて欠けており、成長のそれより、歴史の痕跡がより多くそこににじみ出ている。(P.15) タイトルのとおり、ベートーヴェンの晩年作品について書かれた文章(1937年)。ここでアドルノは、ベートーヴェンのみならず、さまざまな芸術家の「晩年の作品は破局(P.21)」に向う理由について分析をおこなっている。 はじめに、アドルノはこれらの晩年作品に関する世上の見解についての批判から述べる。彼が批判する世上の見解とは、伝記や運命について言及しながら、晩年の作品における破局を、死を前にして個人性が暴発した結果だ、と意味づけるようなものである。このような解釈をアドルノは「心理的な解釈」(P.18)と呼び、不十分な見方だとした。 アドルノはベートーヴェンを、主観性が働いている
2009/01/01 リンク