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心臓を掴む手 - 斉木京の怪談
三十代の男性、Jさんはもともと幽霊や怪談を信じない方だという。 しかし、一度だけ不可解な出来事に遭... 三十代の男性、Jさんはもともと幽霊や怪談を信じない方だという。 しかし、一度だけ不可解な出来事に遭遇したことがある。 数年前、付き合っていた女性の家に初めて泊まりに行くことになったが、彼女から奇妙な話を聞かされた。 彼女はアパートの一室で一人暮らしをしていたが、真夜中に眠っていると何かが度々部屋の中に忍び入ってくるらしい。 それは、のそのそと床を這いながらベッドまで近づき、決まって寝ている彼女の胸の上に伸し掛かってくるという。 やがて布団や服を透過するようにして、ひどく冷たいものが彼女の左胸に押し当てられる。 彼女はその形から、とても小さな子供の手であると直感した。 その氷のように冷たい手は、ずずずっと皮膚をもすり抜けて心臓を掴もうとするかのように深く入り込んでくるのだという。 Jさんは初めはその話を鼻で笑った。 しかし、その夜遅く彼女と一緒にベッドで寝ていると突然彼女が悲鳴をあげて跳ね起