タイトルがややミスリーディングかもしれないが、本書は、宗教と赤軍などの過激派の関係を論じたものではなく、一般社会から過激視された宗教思想を分析したものである。2016年度に実施した本学文学部・大学院人文社会系研究科合同の宗教学演習がもとになっている。IS (ISIS,ISIL,イスラム国) がシリアで版図を広げ、ISに直接的・間接的に関係するとされるテロが各地で発生している状況を受けての試みだった。授業には宗教学専攻の学生だけでなく、他学部の学生や留学生が何人も集まり、関心の高さが窺われた。ところがその反面、初回の授業でまず「“イスラム過激派”とよく言うが、過激派の反対は何か?」と聞いたところ、答えられる学生がいなかった。ただ一人、50歳代の社会人学生を除いては。つまり、「過激派」と聞いてすぐに赤軍を連想する世代には、過激派が穏健派と対になる概念であることは自明だが、今の多くの学生にはそう