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橋本治の孤独| 仲俣暁生
本の営業をしつつ、幾人かの書店の知人たちと話して気づいたのは、いま中堅以上の世代の人たちにとって... 本の営業をしつつ、幾人かの書店の知人たちと話して気づいたのは、いま中堅以上の世代の人たちにとってさえ、既に橋本治はよくわからない存在(おそらく仕事が多方面すぎることと、1990年代半ば以前のイメージを共有をしていないことによる)になっているという事実だった。 橋本治はあるときから「現在」にいることをやめ、時評的な文章も減らして、まずは古典古代、さらには近代の謎の究明に向かい、そして最後まで独特の小説家であり続けた。それを私は橋本治が自身で選びとった孤独だと考えている。 『孤独の発明』のオースターが亡くなり、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』が文庫になるこのタイミングで、「孤独」(橋本治にとってそれは近代が招来する必然的な運命だった)とは何かということを、もう少し突き詰めて考えたい。 読書とは、孤独の中でしか行えない行為であると同時に、それを通して孤独を突き抜ける行為でもある。橋本治の思考し
2024/05/06 リンク